当園にある舞鶴実生の来歴について
「舞鶴実生」
富貴蘭「舞鶴」のセルフ(実親、花粉親ともに舞鶴)実生です。
肉厚のスプーン状の葉を交えた丸葉で、襟合わせよく軸の中央が角張るように厚く見えます。
付けは山型か一文字に近い形です。
当園にある舞鶴実生についてご説明いたします。
当園の舞鶴実生につきましては、私が交配実生を行ったものではなく、かつて日本有数の富貴蘭栽培業者、「天王植木」(浜松市)園主の故斉藤三男氏が、横浜市で富貴蘭の実生を行った当時亡き方のお宅から実生フラスコ出し苗を買い取り、それを私が約35年前(1986年ごろ)に1cm足らずだった実生苗(富貴蘭楽焼鉢4号に30〜50本の寄せ植え)90鉢ほどを全て買い取ったものです。
実生苗にラベルは付いておらず、その時にいただいた横浜市の方の交配リストから判別できるものを判断しています。
私も当時、交配実生を行っていましたが、品種と品種が同じである交配を複数回行っても、結実して種子が取れるかどうかは運を天に任すような交配例がいくつもありました。
1度成功しても後に何度交配しても結実すらしないものは多くあります。
当時から舞鶴は栽培していなかったのですが、舞鶴は草体が極小のため、花を咲かすことも容易とは言えず、結実採種となるとかなり困難かと思います。
私が交配した実生苗ではないため、保証できないのが残念ですが、交配リストと実生苗の形態、舞鶴実生以外の実生苗の形態から間違いはないと思っています。
舞鶴をセルフ交配した実生親は、かなりの大株で、葉数の多い健全な株でないと結実採種は難しいと思いますし、そういう株でも複数回、交配して偶然結実するくらいの確率だったかも知れません。
交配リスト
横浜の方が作成した交配のリストです。
赤字は私が落書きしたものです。
連番号からすると富貴蘭の他の組み合わせもあったようですが、斉藤氏からはこのリストと他の1枚は富貴蘭×洋ランの1枚をいただきました。
豆葉の交配は、金銀羅紗セルフ、金孔雀×バンダ・セルレア、舞鶴セルフ、玉金剛×金銀羅紗、玉金剛×富貴殿があります。
金銀羅紗セルフ・大波青海セルフ・舞鶴セルフを除き、交配親の形質を受け継いだ株はほとんどありませんでした。
斉藤氏にいただいた横浜市の方の交配リストを見ますと、豆葉の交配は、金銀羅紗セルフ、金孔雀×バンダ・セルレア、舞鶴セルフ、玉金剛×金銀羅紗、玉金剛×富貴殿が全てです。
また、当時、私も斉藤氏から供与いただいた舞鶴の花粉を使って数種類の交配を行いましたが結実に至りませんでした。
青海はめしべが無い奇形花のためセルフ交配はできませんが、花粉を使った交配が当園の「淀ノ海」です。
最近の交配実生技術は、30年前と比較すると格段に進歩していると思いますが、ランに花を咲かせて結実させることは昔から現在も変わりないと思います。
花を咲かせるには、株をできるだけ大型に育てないと花を付けませんし、結実は樹勢も良くないと困難になります。
子出しに関しては、昔から生きてきた多くの富貴蘭銘品と違い、実生株は株自体が生まれて間もない株のためと思いますが、実生株の子出しは一般的に良いと思います。
30年前に苗を購入した時は1cm足らずの苗で、豆葉であることが分かる程度でしたので、舞鶴実生が何本あったのか分かりません。
植え替え時に割れたものは2鉢になりましたが、現在の在庫は12鉢×3トレーくらいです。
植え替え時に分離せずに35年間1株として育ってきた株が4,5鉢あり、最大のもので10本立ちくらいです。
それを見ると舞鶴実生の子出しは格別に少ないと言えます。
葉焼けしない程度に採光を多くすると、株の全幅は狭まり、葉幅は広くなると思います。
葉数は多く、年間3枚の葉を出すとしても写真の株では、古い葉で約7年前のものになります。
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