2014年2月分
当園で交配したクリスマスローズの初花です。
ダブルの実親は2,3鉢しかありませんが、ダブル同士の交配はかなりの確率でダブルになるようです。
・ 2014.2.10 ノキシノブ実生変異
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2014.2.10 ノキシノブ実生変異
寒さも本番真っ只中となりました。
灯油価格も高止まりする中、経費節減と成長は遅れても植物に耐寒性がつくのを期待して、大寒波の天気予報がない限り今冬も何とか無加温で乗り切ろうと思っています。
今冬からビニールハウス内に置いてあった少数の洋ラン系のものをガラス屋根温室へ移動し、低温に強いフウラン、オモト、クリスマスローズ等にして温風ボイラーは点火を止めにしました。
クンシランも入っているため、氷点下2〜3℃以下に下がった場合は心配です。
ガラス屋根温室は温度設定による自動起動ボイラーですが、室内が氷点下での起動設定のため、外気温が−2℃くらいまでは起動せず、今冬も1回程度起動する日があるかどうかという状況です。
1月に自宅のガラス屋根フレーム内で−2℃となりましたが、その時もガラス屋根温室のボイラーは点火しませんでした。
タンク内の灯油は既に3〜4年経過したものであり、一度燃焼させてしまった方がよいとは思うのですが・・。
ガラス屋根温室にはミニカトレア他、洋ラン系統も置いてあるのですが、長年の低温環境に慣らされたのか1℃くらいでは何とか耐えて花を咲かせています。
洋ラン系統は品種にもよりますが、氷点下にあわせることは避けた方がよいのは言うまでもありません。
フウラン、富貴蘭、オモト、カラタチバナ、マツバラン等の日本に自生しているものは氷点下になっても支障ありませんが、冬は水やりを控えて乾燥気味にしたほうがよいでしょう。
休眠状態にしておけば、例え冬に水切れ状態になっても夏よりはダメージが少なく済みます。
今回は変わり葉ノキシノブの実生変異したものをご紹介します。
ノキシノブは全国に分布するシダで、当地方では敷地囲いのマキの木等に着生しているのがよく見られます。
近くの町にある神社のケヤキの大木に着生しているノキシノブです。
樹皮に苔の生えるような古木には、着生しているのがよく見られます。
あちこちに見られて、花も咲かず、あまり邪魔者にもされず、常に無視されているような存在かも知れません。
ウィキペディアには「庭木や石垣などに着いたものは風流と捉えられることが多い反面、ほとんどの場合勝手に生えてくるので、積極的に栽培されるということもない。」とあり、まさにそのとおりであります。
そうはいっても、花咲Jも物好きな性格の上によほど暇だったのか、昔、自宅裏のマキの木に着いていたものの一つ二つを鉢にあげたことがあります。
インターネットで検索していたら、ノキシノブが植木の幹や枝を覆うほどに茂りすぎて植木に害が出ないかという質問に、回答者が影響はないでしょうと回答しているのがありました。
近くの町の旧農家に植えられている柿の木に着生しているノキシノブです。
度々この場所を通り、初めはフウランかと思ったのですが、車を停車して見るとノキシノブだと分かりました。
今回写真を撮らせてもらうと、所々に数塊のフウランの大株も着いていました。
柿の落葉後は、その光景が一段と目を引きます。
ノキシノブも木や岩に着くランと同様、寄生ではなくて着生しているだけなので樹木に害はないと思います。
極端に繁り過ぎれば幹表面の水分が早くなくなったりしそうですが、ノキシノブ本体の根や葉が水を蓄えるという働きもありそうです。
それより日光が遮られるほどになれば影響も出て、幹、枝の樹形の景観を損ねるかも知れません。
昔から日本人とともに生きてきた植物で、先人がその中から変わり葉を選別したものが園芸品種となって楽しませてくれています。
花咲Jも以前、東洋蘭、富貴蘭等を収集していた時に、古典園芸専門の業者の栽培場で購入したものがいくつかありました。
ノキシノブの古くからある品種で「鬼面童子」です。
初めて見た時には、世にも珍奇な変わり葉に驚きました。
葉先にツノのような鈴虫剣が出ます。
この品種は胞子ができないのが普通ですが、昨秋株分けして植え替えた時に胞子葉が出ているのに気付きました。
左側へ長く伸びている葉に胞子のうが付いています。
胞子葉の先端にも一人前と言ってはちょっとかわいい鈴虫剣が付いています。
昔購入したノキシノブの園芸品種は、その後、ほとんど植え替えもしないため、枯れていくものもありましたが、マツバラン同様にこぼれた胞子による自然実生が温室内のあちこちに発生します。
標準的なノキシノブの葉裏に見られる胞子のうの列です。
少々不気味な感じもしますがタコの足の吸盤のようで、金色に輝いて見えます。
胞子のうを近接撮影した写真です。
小さな粒々が胞子のうで、その中に胞子が入っているということです。
マツバランは置いてある棚よりも下方にあるオモト等の軽石・土植えの鉢内によく実生しますが、ノキシノブ(ほとんど軽石植え)は置かれた棚より1mは上方にあるフウランの水苔内に発生し、軽石や砂類で植えた鉢内には発生しません。
といっても当園ではの話です。
着生後10年以上経ち、今となっては植物体に比較してかなり小さなヘゴに着けたスノーダンサーです。
ノキシノブは多少変わり葉ですが、ランを着けた時に一緒に着けたものかどうか定かではありません。
葉の量はランよりも多くなっています。
他のランと同じ間隔の水やりなので当然乾きやすく、度々ノキシノブがしおれています。
それでも互いに健在で小さ過ぎるヘゴに同居しています。
ミニカトレアの鉢に同居しているノキシノブです。
こちらは普通種のノキシノブで鉢内に自然実生したものです。
写真のノキシノブも水やり前で、水切れして縮れています。
ミニカトレアのヘゴ着けに着いているノキシノブ変わり葉です。
ミニカトレアもヘゴに着けて10年は経っているのですが、ランを着けた位置が悪く、さらにランの伸びる方向も悪くてヘゴをはみ出してしまっています。
このノキシノブも着けたものか自然実生か分かりません。
フウラン鉢植えに自然実生したノキシノブ変わり葉です。
フウラン鉢植えの表面に生えて日の浅いノキシノブ幼苗です。
この大きさでは芸が出るかどうかまだ分かりません。
マツバラン、ノキシノブとも親株の植えてある鉢内には最も多くの胞子が落ちると思うのですが、いずれの実生も生えないのが不思議です。
胞子は風で浮遊すると思うのですが、実生する場所を選ぶのは、その胞子の重量や落ちた場所の環境条件の違いによるものでしょうか。
フウランも1〜2年で植え替えしていれば発生しないのですが、植え替えを怠った鉢の表面を埋め尽くすほどに出たことがありました。
自然環境の中では、太平洋岸の中田島砂丘に連なる防風林砂丘の砂地に大株(直径、高さとも30cmくらい)がたくさん自生しているのを見たことがあります。
自然の中での突然変異、実生による変異の出現率はかなり低いのですが、温室内は温度、湿度、水やり等で安定した環境にあり、変異株の園芸品種が複数あれば自然交雑による実生変異の発生率は高いと言えます。
こちらもフウラン鉢に生えた変わり葉ですが、実生としてはなかなかの芸を見せています。
より変わった芸に進化することを期待させてくれます。
当園で約15年前にヘゴ原木(整った形状のヘゴ材を切り出す前の丸太状直径20〜30cmのヘゴの木)に何種類かのランを着生させたものを作りましたが、7,8年後に自然実生のノキシノブが原木に生え、変わった芸があったので2年ほど前に鉢上げしました。
こちらはヘゴ原木に生え、今までになかった芸と思われる実生変異ノキシノブです。
胞子のうが付く部分の葉が変化したと思われるもので、葉裏につく胞子のうは一見すると見当たりません。
葉の表側から見ると、長い鈴虫剣が伸びています。
鈴虫剣の裏側を見ると、葉の両端が巻き合わさって棒状になっています。
葉面に胞子のうがないために表面は滑らかで、欠刻葉や二股葉を交えます。
古い葉の裏側を見ると、鈴虫剣の葉が合わさった部分が開いて胞子のうらしきものがあふれ出すように見えます。
この株では胞子のうが付く部分(それも先端のみ)の葉が巻いて鈴虫剣になっているようです。
観賞価値が高い変異(芸)が現れる確率は低いのですが、それがベースとなってさらなる芸を生み出す可能性もあると思います。