2015年2月分
当園最大級の大きさの風蘭交配種「藤娘」です。
写真は1月15日のものですが、既にこの時点で1ヶ月以上咲いており、それから1ヶ月が過ぎて、まだ1ヶ月近く持ちそうです。
花持ちの良いランはありがたいのですが、あまり長く咲いていると、ランに申し訳ないのですが見るほうの関心も薄れてきます。
・ 2015.2.13 ヘゴ着け作業
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2015.2.13 ヘゴ着け作業
年明け正月からランの植え替えとともに、ランをヘゴに着ける作業も同時進行で行っています。
今回はヘゴ着け作業についてご紹介いたします。
花咲Jがフウラン・セッコク・洋蘭系デンドロビウム・カトレア等の着生蘭の栽培を始めたのは30年以上前で、そのころから栽培上における自生環境での生態に興味を覚えました。
園芸好きの先輩に連れられて山歩きをし、セッコクが岩山の崖のような場所に自生している姿を見ることもできました。
当時は野生ランのブームもあり、人が容易に近づけない崖にしか残っていない状況だったと思います。
フウランの自生を見ることはできませんでしたが、フウランは山里・農村ばかりか都市部でも庭木の柿やマキの木に着けられているのをよく見ます。
人の手によって着けられているフウラン・セッコクは、一度活着すれば管理しなくても枯れるようなことはほとんどなく、自生ではおそらく見られないような超大株に育っているものも時々見かけます。
着生ランを栽培し始めたころは普通の草花と異なる水やり加減等がよく分からず、初心者の身としては難しいものだと思っていました。
植物の栽培はよく自生地に学べとも言われるように、自生の姿を探しに度々山へ行ったものです。
自生を見つけることができないランは、雑誌等に掲載されている自生姿の写真をよく見つめ、写真に写っている周囲の状況や解説文を読み、自生環境を想像しました。
そこから置き場所の環境設定や水やり加減等の参考にしました。
そのころも着生ランをヘゴやコルクに着ける方法は広く知られていましたが、水苔植えがごく当たり前の栽培方法であり、それ以外の材料に着けたりするのは特殊な方法と思っていました。
庭木につけられたランも見ていましたが、庭木もあまりない当宅では着けることもできませんでした。
庭木の高い位置に着けられているランでは水やりもできず、手近に見ることもできないのでは園芸好きの納得できる栽培方法ではないと思ったりもしました。
初めてランをヘゴに着けたのは約20年前のことでした。
自分が実際にやってみてから現在までに、水苔植えとヘゴ着けの栽培方法を比較すると色々なことが分かりました。
最も大きな点はランがヘゴに着けられている状況が、着生ランの生きている自然の姿として見られるということでした。
「ヘゴ着けランコーナー」
また、着生ランの水苔植えでは苔に隠れて見えない根が全て見られるために、ランの根の動きとともに健康状態が分かります。
他にも色々ありますが、趣味の方が着生ランの栽培をされる場合に一度はお試しになられることをお勧めしたい栽培方法です。
着生材料に活着するまでは、洋ランの中で生長の早いもので1年、フウランでは約2年ほどの時間がかかりますが、活着して3年ほど経つと自然の感じが出てきます。
活着するまでの置き場所は、あまりに風がよく当たる場所では、株が過度の乾燥に対応するべく小振りの姿となり花付きも減るおそれがあります。
そのような場合は防風ネット・寒冷紗を使うことにより、風をやわらげて水やり後に乾くまでの時間を長くすることができます。
ヘゴ着け作業のやり方は
「ヘゴ着けランとは」
をご覧ください。
富貴蘭の植え方も多様ですが、古来から楽焼鉢に水苔の中空植えが定評のある植え方です。
現在にあってもその方法が基本的なやり方だと思いますが、それを基にして色々なバリエーションを試みるのも楽しいことではないでしょうか。
そんな気持ちから以前より富貴蘭のヘゴ着けも試みています。
もちろん、高価で希少価値の高い富貴蘭の品種は伝統的な植え方の方法をとるのが良いと思います。
富貴蘭のほとんどの品種も、元は山野の樹木や岩に着いて自生していた植物です。
富貴蘭をヘゴ着けすると、古代から受け継いでいる遺伝的性質が呼び覚まされるのか、元気に成長する姿がよく見られます。
富貴蘭は、その鮮やかな斑により又は葉の小ささ等により、原種に比較すると葉緑素のある面積が少ないものもあり、そういう点からも栽培には原種より気を使う必要があります。
そのためヘゴ着けにしても同様の配慮は必要ですが、水やりの管理は楽になります。
ヘゴには活着することができても、姿形良く完成させることが難しいところもありますが、4〜5年前にヘゴ着けした富貴蘭をご紹介いたします。
富貴蘭の当園交配種未登録「淀ノ海」のヘゴ着け(立柱鉢植えタイプ)です。
鉢植えの感覚で持ち運びや飾ることができるように、ヘゴをプラスチック鉢に固定してあります。
プラスチック鉢に穴を開けてナイロン釣り糸で吊るすこともできます。
植え替えの必要がないということは、趣味者にとって一つの楽しみが減るということではありますが、5年10年と植え替えの必要もなく、水苔植えと同様の感覚でかん水すれば充分です。
水やりの際は、乾燥した水苔に比較して、水の浸み込みも速やかです。
水苔植えの場合は、時に水苔を濡らし過ぎないように調整する場合もあるかと思いますが、ヘゴ着けの場合は水を多く掛けても掛け過ぎになることはありません。
水やり管理はさほど気を使う必要もなくなって楽になります。
ヘゴに姿形良く着かなかったものは、縛り直し等の
修整作業
を行いますが、そうするとその時点からまた1,2年がかかり、気の長い仕事だと思っています。
修整の必要がない姿形に活着する率は5品作れば1品程度という状況ですが、この点を何とか改良したいものです。
富貴蘭のヘゴ着けを数年前から試みていますが、その出来映えは中々満足いくものが作れず、現在未だに作業進行中です。
当園ホームページを初めてご覧になられた方への余談(以前の繰り返しです。)ですが、ヘゴ着けフウランが自生環境と同様に、雨が降らずに日照りが続いた場合、どのくらいまで耐えられるのか疑問に思ったことがあります。
ヘゴ着けフウランのかん水を止めて何日くらいもつのか、その後どうなるのかを当園にて試したことがありますので、
「フウランの耐乾燥性について」
をご覧ください。
実際に試した株は一時少し機嫌を損ねましたが、3年5ヶ月後の現在の写真も掲載しました。
着生ランの水やり加減は、植え込みの仕方、鉢の材質と大小、棚場の環境設定等により大きく変化しますが、フウランが備えている性質を探るというご参考になればと思います。