2015年4月分
ヘゴ着け(立柱鉢植えタイプ)のフウラン・セッコク交配種です。
脇に着けたセッコク交配種に花が咲いたため、ヤフーオークション出品中のものです。
セッコクと競争したわけではないでしょうが、たくさんの根でヘゴはほとんど見えません。
鉢植えのような状態で鑑賞できるようにしたものですが、下へ垂れた根も多いためにナイロン釣り糸で吊ってあります。
・ 2015.4.14 ランの根を作る
戻る
トップへ
販売品コーナーへ
購入のご案内へ
送料のご案内へ
お問い合わせへ
レポートコーナーへ
2015.4.14 ランの根を作る
ヘゴ着けランやランを育てていると色々なことに思いを巡らし、時には試行錯誤と失敗を重ね、より良い方法を探っていくことをやっています。
当園で主に栽培しているフウランの自生環境を想像すると、時には過酷な自然の中で乾燥に順応した着生ランは、どんな性質を持つようになったのでしょう。
自然の中においては実生しやすい環境が着生ランの分布する範囲の主な原因と思いますが、針葉樹林帯よりは通風もある程度妨げられると思われる広葉樹に多く着生するように思います。
そういう環境と自らの栽培棚の環境を比べてあれこれと考えてみることがあります。
葉や根に水分を蓄える性質は持っているということですが、それがどの程度のものか分かりません。
水苔植えの場合、水苔が完全に乾燥すると、逆に根の水分を水苔が奪うようなことがあるのかも知れません。
強風の当たる場所では防風ネット、日射がよく当たる場所では遮光ネット、床面がコンクリート等では湿度を保持するもので例えば鉢花を置いたりする対策が有効と思います。
自生の着生ランでは1週間程度雨が降らないことは度々で、それに適応しているために過度の水やりは有害とも言えます。
水を少なくして管理すると、ランは水を求めてと思いますが根を長く伸ばすようになります。
根が長くなることによって根の周囲を形成する海綿状組織の部分が増えて量を増し、より多くの水分を保てることができるためということも考えられますが、水分のある場所に到達しようとするためかも知れません。
反対に水苔植え等の鉢植えで水やりを多くすると、根はあまり伸びませんし、根を出す確率も低くなるようです。
フウランの水苔植えを植え替えずに長年おくと、水苔が腐朽してくるということもありますが、新しく伸びてくる根は古くなった水苔の中へ潜っていくことはほとんどありません。
フウラン等を形よく鉢に植え込むため、根を乾燥から保護するため等から水苔植えが考え出されたと思うのですが、ランにしてみればありがた迷惑なのかも知れません。
ランの株を何分間濡らせばどのくらい水を取り込み、何日間もつのか分かればよいのですが、ランにしてもそれは一律ではなく自然の気候に適応しているのでしょう。
それらを人間が察して適切な管理を行うことが容易でないことは明らかです。
当園のような小規模な栽培場で同じ環境や管理をしていても、個々のランの出来栄えに大きな差が出ます。
良くできたものとそうでなかったものの環境や管理の細かな違いを考えて栽培に生かすことは大切だと思います。
着生ランの種類でも高湿度の場所に適応しているものは、頻繁な霧吹き等が有効とされています。
フウランをはじめ日本の着生ランでは自生地の自然環境等から、それほどの湿り気は必要ないような気がします。
洋ラン系であれば原産地が熱帯雨林のような種類も多いため、ランの性質が空中湿度を多く必要とするものがあります。
フウランの自生地は関東以南とされており、当地静岡県浜松市も含まれますが、特に冬は名物の遠州空っ風という強風が吹き、晴天が続くため異常乾燥注意報も度々発表されます。
当宅西面の道路沿いの吹きさらし場所に植えてある柿の木に着生させたフウランは、全くの放任状態で今冬の最低気温マイナス2,3℃(当宅無加温ガラスフレーム内温度計計測値)が2,3回ありましたが、水やりは冬期間に1回やったかやらなかったかという状況で、繁殖状態は良いとは言えませんが異常なく生育しています。
このフウランを自生地に自生しているフウランと見立てて、時々観察しています。
この柿の樹皮よりは水分保持力のあるヘゴに活着したフウランは、それなりにほどほどのかん水でよいのではないかと思います。
噴霧スプレーは葉や根を濡らしますが、ヘゴ材の維管束の隙間に水が浸透することはあまりありません。
フウランにとってはヘゴ材内部に浸透した水分が徐々に水蒸気となる程度の湿度がよいのかも知れません。
当地方のように年間を通して霧の発生がほとんどない環境にも適応していることから、乾燥と水濡れのはっきりしたメリハリのある水やりが良いように思います。
ヘゴ着けフウランを見ますと、伸びていく新根の先端近くにヘゴ材表面があると根はヘゴに張り付きやすく、一旦根の先端がヘゴに接して張り付いた根は、ヘゴ表面に張り付きながらあまり離れようとせずに伸びていきます。
ヘゴ材に着生させた場合、粗い維管束のヘゴ材では維管束の狭い隙間内へ根が潜入し、時にヘゴ材を貫通して伸びることもよくあります。
ヘゴに張り付いた根の伸びる方向性は上下左右規則性はありませんが、株元から離れる方向へ伸びていきます。
深い溝があればそれに沿うことが多いのですが、ヘゴ表面の維管束が並ぶ細かい溝では維管束の並ぶ方向性は無視され、ヘゴ材表面に張り付いて伸びている限り、ヘゴ材の水平面はもとより垂直面においても水の流下する下方(重力)への指向性はほとんどありません。
これは水分を求めてというより、自身の草体を樹皮等に固定するのが主な目的なのでしょうが、より広範囲に水分を確保する目的も兼ねているのでしょう。
フウランの根は下に垂れると大株では長いもので130cm伸びるものもありますが、その途中で鉢花等の土に触れるとそこで伸長を止め、土中に潜っていく根はほとんどありません。
フウランの根はいつも湿っている所には行きたがらないようです。
自然の中では長雨のときなど、我慢して耐えているのでしょうか。
常に湿っている水分と違って雨は滞留せずに流れていくから問題ないのかも知れません。
人間の考えでは、フウランの根はかん水等で濡れるものにしか張り付かないように思われますが、かん水の水で濡れることのないトレーの裏側や裏側のくぼみにも張り付いています。
このことから根先は濡れた面を張り付いて伸びていくのではなく、ヘゴ着けの場合は表面が乾いている時間の方が圧倒的に長い中で、乾燥した面に張り付きながら伸びていくようです。
根先の張り付く面(先端約1cmほどの白色でない部分、白色になった部分は二度と張り付きません。)には微細な根毛を発生させて張り付きますが、濡れた面に張り付くのかどうか疑問もあります。
洋ラン等の根はフウラン以上の長さに伸び、棚から下方へと伸びて鉢花等の土に達すると土中で二股三股に分枝し、さらに土中を伸びることがあります。
水苔植えフウランの根もほど良い水加減で管理した水苔の中で分枝を繰り返すことがあります。
洋ラン等で水分のある所に達した根は、より多くの水分を吸収しようとしているように見えます。
フウランの根は洋ラン等と比較すると、根の伸長は弱く分枝する根も極めて少ないために、ヘゴ材等への活着には洋ランの2倍程度(洋ランは1年、フウランは約2年)の期間を要します。
ヘゴ材の下端に達した根は、裏側に回って上方へ伸びる根もたまに見られますが、ヘゴ材を離れて下方の空中へ伸びていきます。
水の滴が落下していくためと思いますが、ヘゴ下の空間に明暗の差が大きいと暗い方へ新根全体の根がなびくように指向性が見られるときもあります。
あるいは暗い方が若干でも湿度が高いからでしょうか。
フウランも水分がなければ生きていかれず、水や栄養となる肥料は好むと言えます。
しかし、他の植物よりも顕著に過分の水分は嫌い、過分の肥料では肥料焼けして根を枯らします。
草花も過分の水・肥料は逆効果ですが、フウランにとっての過分とは人間の考えからすると極めて繊細な量の問題のようです。
自生地では自然の蒸留水とも言える雨水だけで生きていることを考えれば、肥料については当然のことかも知れません。
ほど良い水と、生長期には極めて薄い肥料を根気よく与え、水苔植えでは根を窒息させないような管理が良いと思います。
管理の前提としては、植物の原動力である光合成を行う葉の生長を助けることが必要です。
そのために葉焼けさせない範囲の中で、十分な採光をとれるように置き場所と適度な遮光が重要になります。
葉焼けしない程度の遮光率の選定というのは簡単ではなく、葉焼けが現れたときは既に遅いということになりますから、最初は一般的な遮光率より10〜20%強めに設定するのがよいと思います。
最適な遮光率は、特に富貴蘭では品種ごとに相違し、フウランでも細かく見れば株ごとの健康状態、植え込み方、1株の大きさ等様々な条件により変えるのが理想です。
最初は強めの遮光率で管理し、1〜2年後に葉色(緑が薄く黄色味を含むようになったり、冬から春になって紅色の斑が出るのは採光が多く、反対に緑色が濃くなるようであれば採光が少な目と言えます。)、葉の徒長、芽出し繁殖率、花付き率等を観察して、遮光を徐々に少なくし、最適なところにもっていくのが安全で確実です。
多くの人は、あまり目にふれられない根よりも、観賞価値のある花や葉に気を取られがちですが、ランの健康の土台は根にあると思います。
こんなふうにいつもあれこれと思い巡らしながらランを育てています。
今までに推測したことが外れるようなこともなかったとは言えませんが、これからもいろいろとランに教わっていきたいと思います。
ランについては人間目線から判断することがほとんどでありますが、例えば春になり根先が動き始めると同時に水も肥料も欲しがるのかどうか、生長期の水やりの量はいつも同じで良いのかどうか、人間のように規則正しい生活(ランにとっては水・肥料等)がランにも当てはまるのかどうか・・等々。
多くの先人が考え出し、受け継がれてきた栽培方法は貴重なものだと思います。
私を含めて多くの人は現在やっている管理方法が正しくないと思っている人はいないのでしょうが、今のやり方が最善かどうか考えてみるのも必要かもしれません。
ランは身をもって育て方が良かったのか悪かったのかを現しますが、その回答には長い時間を要し、悪い結果の場合は回復不能となっていることもあります。
ランの育て方に正解が示されることはあまりありませんが、ランが元気に気持ちよさそうに生長すれば嬉しいことです。
このコーナーで再三ご紹介したテレビ番組の「植物男子ベランダー」の第2弾シリーズがNHKBSで4月16日から毎週木曜日に始まります。
ご覧になっておられる方が多いと思いますが、植物好きな作家いとうせいこう氏の原作「ボタニカルライフ」(植物生活)をユーモアたっぷりにコメディタッチでドラマ化されたものです。
当宅に植えてある実生ものの花木その1です。
モクレンの仲間のピンク色花シデコブシで実生後20年近く経っています。
木はこれ以上大きくならないように剪定していますが、今年は過去一番の数の花を咲かせました。
つぼみの三分の一くらいが一斉に開花した翌日の朝、半分近くの花の花びらが何ものかに切り取られていました。
切り取られた量からして虫とは考えられません。
食べられるのかと思って見ればおいしそうなのですが、花びらを食べる鳥などいるのでしょうか。
実生花木その2のツバキです。
以前、生け垣の一部分として植えてあった白・ピンク色大輪・赤色花合計3本のツバキの下に唯一自然実生したツバキです。
実生から12,3年経ち、やっと今年初花を咲かせました。
植え替え等の管理が適切ではなかったせいもありますが、いつまでも花が咲かず、つぼみを見つけた時は嬉しく思いました。
3色3本のツバキがあったことから、自然交雑してもしや良花が咲けばと少々の期待をしていました。
つぼみを発見してからは毎日のようにつぼみを眺めてやっと開花したら、何と、全く普通の赤花でした。
自然はこういうものと納得させられましたが、どうせ育てるなら人工交配すれば良かったとあれこれ思った次第です。
実生花木その3のハナズオウです。
園芸の先輩宅の大きな株に鈴なりになっていた種をもらって蒔き、4,5年経ったものです。
種から芽が出たらグイグイと背を伸ばし、さすがマメ科の木と感心しました。
去年夏に急に地植えしようと思い立ち、ゴボウのような太根を切断したのが気になりましたが、案の定、夏の終わりには全ての葉を落とし枯れたかに見えました。
枯れたかに見せて、ところが今春、見事に生き返って花を咲かせました。
こんな丈夫な木のようになりたいものです。
花木ではありませんが、実生その4のクンシランです。
良柄と良柄の株を交配しても、良柄の子は極めてわずかしか生まれません。
葉が大きくて見ごたえがあることと、シックな縞柄に派手な花がなぜか似合います。
温室では無加温でも3月に咲き出し、いち早く春の到来を告げてくれる花です。