2020年5月分
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2020.5.27 フウラン自生観察の再現を夢見て
世界がコロナ禍に見舞われているさなか、これ以上の拡大がないうちに一刻も早いワクチンや治療薬の開発が待たれます。
医療水準の低い国へ感染が広がりつつある状況と、ワクチンの開発に関するニュースが錯綜して気の置けない日々が続いています。
ウィルス病は植物にも見られますが、研究が進まないためかランのウィルス病に対する特効薬はないようです。
他のランに比較するとフウランはウィルスが感染しにくいのか、感染しても病徴が現われにくいのか分かりませんが、ウィルス斑等の症状は見かけません。
ランのウィルスも種類の違いがあるため、フウランは侵されにくいのだろうと思います。
そのフウランもかつては人里近い山々に自生していたようですが、花咲Jは自生するフウランを野山で一度も見たことがありません。
神社仏閣や旧家の大木に着いているのを見たことはありますが、最初に人間が着けたものか定かではありません。
大木の高所に着いているものは自生だと思います。
自生フウランが見られなくなったのは、文明の進展による環境破壊と人口増加の影響が大であります。
それに加えて着生ランというユニークな生態と、端正な葉姿、可憐な品のある花に芳香まで備えれば、昔の人でさえ、手に取ってみたいという欲求が起きるのも当然のような気がします。
現代に至っては、自生のフウランはほとんど見かけられなくなっています。
江戸時代の富貴蘭及び古典園芸植物のブームこそ、平和な時代を象徴する産物であり、昔の人はフウランの選別品種でもある富貴蘭を求めて、どれだけ野山を巡ったことでしょうか。
そのおかげもあって現代の私たちを楽しませてくれています。
フウランを楽しむ中で、栽培の原点でもある自生地を見てみたいという夢も見続けてきました。
神社仏閣や旧家の大木に着いているフウランは、残念ながら近くで見ることが困難なことが多いと思います。
根の張っていく様子や、本来の生長ぶりを間近に見ることも一興と思います。
そんな思いもあって、地元にある自然木が多く残る「はままつフラワーパーク」内の樹木にフウランを着けさせてもらいました。
観光施設であるため、運営している浜松市の外郭団体、公益財団法人浜松市花みどり振興財団、理事長(並びに園長)の塚本こなみ様のご承諾を得て、昨年5月に園内の樹木14本にフウランを着けました。
2019年5月8、13日に着け、着けた後は晴天が続いた日に水やりに伺い、9月以降は割合適当な間隔で降雨があったため、8箇月ぶりとなる今年5月末に写真を撮影してきました。
太さ一抱えの大木(樹種不明)に着けたフウランです。
木に着けて丸1年後の状況で、去年貼り着いた根も見られます。
新根が伸び始めたところで、花芽はまだ小さくてあるかないか分からない状態です。
モミジの大木に着けたフウラン株3塊です。
他のモミジへも着けましたが、フウランの根張りが良いためモミジとの相性は良いと思います。
モミジ上部の葉は密に茂っていますが、葉の下の空間が広いため明るい日影となっており、フウランに適しているようです。
アイビーのようなツタとアケビのツルがフウランを覆っていたため、横へ避けてもらいました。
着いている位置は幹の北東側になりますが、西及び南側は木が茂っていて暗い日影になっています。
冬は寒風がまともに当たりますが、特に問題はないようです。
フウラン株の大きさからすると他のモミジに着けたものより根の量は少なく、今年出る新根に期待するところです。
フウラン株を縛っているビニール被覆針金と黒色ナイロン糸は、早ければ今年秋に取ることができるかも知れません。
ムクノキに着けたフウランです。
着ける時に樹肌を見て、表面の凹凸の粗さ等がフウランに向いているように思ったのですが、表皮が剥がれやすいようで余り向いていなかったようです。
フウラン株の根元の樹皮との間に樹皮の細かな破片が溜まり、そうなると新根は樹皮に張り付けなくなります。
モミジ園芸品種「野村」に着けた株です。
モミジの落葉後は直射日光も当たっていたと思いますが、今は新葉に覆われて柔らかな日差しが当たっています。
同じく別の位置にあるモミジに着けた株ですが、コケに覆われないか気になるところです。
ヘゴ着けを作っても年数が経過すると、時により立ち葉性のコケが着くことがあります。
長年着いていたように感じられ、風情を醸し出しますが、繁殖しすぎるとランの根には良くないと思います。
特に写真の皮のような葉性のコケは水を遮断すると思われ、根に良くないと思います。
更に別の位置にある樹木で、こちらはモミジの枝張りがよく、日中でも薄暗い状態です。
採光が弱いとフウランの葉は緑色が濃くなります。
通年、弱い採光では葉が徒長して花付きが少なくなります。
モミジのような落葉樹では落葉後に日光が当たるため、ある程度の花は咲くと思いますが、花付きの減少が気になります。
上写真の株を横から写した写真で、フウランの根張りが良い状況です。
これからすると弱光線の方が根の伸長に良いと言えます。
当日は8箇月ぶりということもあって、株の隙間には落ち葉が溜まっていました。
多量に溜まると採光に影響もあり、また、新根が樹皮に着くのが妨げられます。
ブナに着けたフウランで、去年伸びた根が少ないながら、樹皮に貼り付いていました。
白っぽい樹皮とランの葉のコントラストが良く映えると思います。
上写真の反対側ですが、貼り付いた根は少ないながらも良く伸びています。
シイの木に着けたフウラン株3塊です。
樹皮の荒れ具合はカキの木に似ていて、他の樹種より適していると思ったのですが、革質の葉が隙間なく密集して繁茂しているため、少々の降雨では幹が濡れない恐れがあります。
去年9月以降は、降雨があると自宅の屋外に置いた石臼へ溜まる水量で雨量を想像していました。
雨天があっても雨量が少なければ、幹に着けたランが濡れるに至らず、半月程度を目安に水やりに伺うつもりでいましたが、幸いそれまでの間にまとまった降雨があり、今年5月まで伺わずにきました。
シイに着けた株が一番の気がかりでしたが、枯れずに持ちこたえていて安心しました。
ハンノキに着けたフウラン株2塊で、上は問題ありませんが、下の株は低すぎたうえに終日直射日光が当たり、葉に採光が多いと出る紅斑が見られます。
樹木の根元にはクマザサが生い茂り、こういう場所では虫害も出やすくなります。
ハンノキの下株は株元の根と樹皮の隙間に虫の巣か食べかすと思われる顆粒状のごみが溜まっていました。
写真はごみを除去した後ですが、こうなるとランの根はごみの中へ入らず、根元が浮いた状態になります。
今回は修整する時間がなかったため、清掃のみとしました。
モクレンと思われる木に着けた株です。
できるだけ近くで見られるように、全ての株を大人の目の高さほどに着けました。
ズダジイに着けた株です。
4枚上の写真と同様に、葉が密に繁茂して水不足が心配でした。
写真の株のうち1本の茎が枯れていました。
8箇月ぶりの訪園だったため、枯れた茎が沢山あるかと思いましたが、枯れた茎は1,2本に留まっていました。
未だ完成とは言えませんが、フラワーパークでは理事長(園長)をはじめ、当方を担当してくださったはままつフラワーパーク職員の田中様、服部様にはご厚誼を賜り、厚く御礼申し上げます。
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