写真はミニカトレアのヘゴ着けです。(2011年11月6日撮影)
(花咲Jの花だより2011年10月)
当園ではフウラン・富貴蘭・ミニカトレアなどをヘゴに着生させたものを作っています。
当園のヘゴ着けランは、吊り下げる形のもの(吊り下げタイプ)・横置きヘゴ材の中心を吊り下げる形のもの(中心吊り下げタイプ)・ヘゴを切断して立てた形のもの(立柱タイプ)・立柱タイプのヘゴを鉢に入れたもの(立柱鉢入れタイプ)等があります。
ヘゴ着けランの販売品については、以前から少量あったもののほか2011年1月からある程度の数量をヘゴに着けています。
根出し量の少ないラン及び小株のランでは、しっかりと着生するまでに数年の年月を要します。
フウラン・富貴蘭の場合は、活着まで1年以上の年月が必要です。
根がしっかりとヘゴ材に張り付いていないと、ご購入先でうまく生長しない可能性も考えられます。
また、2011年以前に着生させたものも形を整え直す場合があり、その作業も継続して行っております。
このため販売品コーナーへのリストアップには中々手が回りませんが、主としてそのランの開花時期にオークション出品をしていきたいと思っております。
最も良い点は植え替えも必要なく、水やりも楽にでき、管理が非常に楽なことです。
水やりは、乾いた水苔のように吸湿に手間取ることもなく、水苔植えの苔に浸透する水量を時季によって加減する必要もあまりありません。
ランを育てる難しさに水やり加減(水のやり過ぎによる根の傷み。)がありますが、ヘゴ着けランは水のやり過ぎによる失敗がほとんどありません。
へゴ着けランは、着生ランが自生している状態に近く、自然に即した栽培方法と言えるため、活着したランの生育が良好です。
ランの根の伸長が観察でき、生育状態の判別ができます。(ランの生長が良くない時は、先に根に現れることが多いのですが、鉢植えの場合は水苔等の植え込み材にさえぎられて根の状態が分かりにくいことがあります。)
過湿による害や冬季に水苔が湿っていた場合の冷害も受けにくく、根腐れはほとんどありません。
水やりは夏季であっても、3〜5日に1回程度のかん水で支障ありません。(当園では無加温フレーム内の管理ですが、夏季を通して6〜8日に1回の頻度で、若干少な過ぎです。)
ヘゴにしっかり着生したランは、着生ランとしての遺伝的性質が呼び起されるのか、乾燥にとても強いです。(自然環境の中では1〜2週間、降雨がないことは度々あります。)
管理が適正であれば、年を重ねるごとに観賞価値が高まります。
ヘゴ着けランの短所
しっかり着生するまでに1年〜2年、種類によってはそれ以上を要します。
着生後の生育により、着生した形が良くない場合、修整が終わるまで年月がかかります。
ヘゴに着けた後、着生するまでが順調でないと、半年〜1年後に枯れることが稀にありますが、適期に行い、若干遮光率を高くして水やりを少し増やせば、そういうことはほとんどありません。(その種類に適した遮光率を若干高くして、水やりも若干多めとすることにより、仮にランの根がヘゴを捉えていなくても生育します。)
着生し活着してしまうと植え替え(ランに対してヘゴが小さすぎる場合等のヘゴの着け替え)に若干手間取ります。(ヘゴ材の表面は、ヘゴの気根である維管束が隙間なく密集しているため、ランの根が維管束内部に潜入しにくく、根が表面に張り付いているため、水分の含有を少なくしている冬に作業すると比較的容易にヘゴから剥がすことができます。)「ヘゴ着けラン修整作業」
ヘゴ着けランの運搬については、鉢植えに比較してかさばるため少々手間取ります。(車での運搬は、車内にヒモや棒を掛けて吊るすようにすると安全に運べます。)
液体肥料等の肥料保持力が弱いです。(網カゴ等に緩効性肥料を入れて補うのも有効です。)
熱帯・亜熱帯地方の木性シダの気根という自然素材であり、維管束自体(気根)や木部は普通の木材よりも堅い材質のため、耐久性は少なくとも20年から30年、あるいはそれ以上となります。
ヘゴ材の輸入に関しては、絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)に該当し、輸出入許可が必要になったため、誰でも簡単に輸出入するということができなくなりました。
「ヘゴ着けランの楽しみ」ヘゴ着けランコーナー
「ヘゴ着けラン ミニ写真集」(当園で作製したヘゴ着けランの写真を多数掲示してあります。)
「ヘゴ着けラン修整作業」
「フウランの耐乾燥性について」
「ヘゴラン作り」
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ヘゴ着けランについて、花咲Jの花だより 2011年10月24日に掲載した写真のミニカトレア・ヘゴ着けを例としてご紹介いたします。
下の写真は2011年11月6日に撮影した写真です。
ヘゴに着生させた年月の記録はありませんが、活着したバルブの数(1年に1芽から約2本出ます。)と記憶などから2000年ごろにヘゴ着けしたものです。
一緒に着生しているエピデンドルム属ポリブルボンは当初に着けたものですが、2018年までに全て取り外してあります。
ヘゴ着けラン全体の長さは最大約30cm、幅は最大約22cmです。ヘゴ材の大きさは長さ約24cm、幅約5cm、厚さ約2cmです。
この時点ではランの大きさに対してヘゴ材が小さすぎる状態に見えますが、生育に支障はありません。
2009年ごろにポリブルボンが繁茂しすぎてミニカトレアの葉が日照不足になる恐れがあったため、現状の2倍ほどの量のポリブルボンを取り除きました。(2012年10月にも繁茂しすぎたので、4〜5株を取り除きました。)
このランは自宅敷地内にある2坪程度のガラスフレーム内に吊り下げてあり、冬季も暖房はしません。
(2012年最低気温、2月3日−2.8℃、同9日−1.8℃、同19日−2.0℃)
ガラスフレームは内部の二重張りビニールもなく、気象台発表の当地最低気温と同数値です。
遮光は年間を通して30〜40%程度の固定遮光ネット1枚です。
かん水は、同室にあるクリスマスローズ、オモト等の鉢植えと一緒に管理し、夏は3〜4日に1回、鉢植えとともにかん水します。
ランを入れてあるビニールハウス・温室フレームに比較すると、土植え植物と一緒の管理では水やり間隔がどうしても短くなりがちです。
それではヘゴ着けに対して水やりが多すぎると承知していますので、たいていはその都度軽く水掛けしています。
冬は暖かい日などに気が付けばかん水するくらいで、1週間やらないことも度々です。
別敷地にある当園栽培場では、自動換気扇・自動天窓・遮光約30(冬)〜70%(春〜秋)のガラスフレーム内において4月〜11月、夏季を通して5〜6日(2018年は6〜8日に1回となっています。)に1回の水やり、冬はビニールで二重張りした無加温のガラスフレーム内、最低温度1〜2℃において10〜15日に1回、表面を濡らす程度の水やりです。
ヘゴ着けランにかん水しても表面はすぐに乾いてしまいますが、上記のペースでかん水していて支障は見られません。
冒頭にある写真の裏側です。
(2011年11月6日撮影)
置肥として網かごに入れたマグアンプKを付けてありますが、根が肥料分を求めたのか、水分を求めたのか分かりませんが、網かごの中へ根を伸ばしています。
網かごを付けると、フウラン等も度々このようにかごの中へ根を伸ばしてしまうため、観賞上取ろうとするとかごをニッパーで細かく裁断することになります。(根の伸長時によく見ていれば防げます。)
(2011年11月6日撮影)
水やりも定期的ではなくこのようないい加減な管理と言えますが、2018年を除き毎年春と秋の2回は開花しています。
2018年は1月〜2月が異常に寒く、3月に気温が急上昇したため、園芸植物、野菜等に大きな影響がありました。
このためか2018年春は開花が見られませんでした。
(2018年1月10日〜2月14日まで35日間の最低気温記録日数、−3℃1日、−2℃4日、−1.5℃1日、−1℃8日、−0.5℃1日、0℃3日合計18日)
ミニカトレアにとってこの寒さは過酷だったようで、その後枯れるに至ってはいませんが、樹勢はかなりそがれました。
枯れるのもやむを得ないと思っていたところ、2018年9月になって少々貧弱な花が咲き、その生命力に驚かされました。
(2018年9月29日撮影)
ミニカトレア等の洋ランを無加温で管理することはお勧めできません。
冬季に低温下で30年近く栽培してきたミニカトレアのため、枯れなかったのではないかと思います。
ランが環境にかなり順応するものと改めて認識しました。
このミニカトレアはヘゴに着けておよそ18年以上経過していますが、洋ランとしての管理は全く適切ではありません。
温度管理は上記のごとくで、施肥もマグアンプを上部に吊るしてあるのみです。
後は、下に置いてあるオモト等に消毒する際、ついでに噴霧してしまうくらいで手入れはほとんどなしの状態です。
水苔植えで管理した場合、年数を経れば水苔も傷み、株分けや植え替えの必要も出てきますが、ヘゴ着けはほとんどその必要がありません。
ミニカトレアの隣に吊るしてあるレプトテス・ユニカラーも同様ですが、それでも毎冬の低温に耐えて花を咲かせるのはヘゴ着けにしたからのように思えます。
また、ミニカトレアの中でも小型であったために、寒さに強い品種だった可能性もあります。
ヘゴ着けは、むき出しになった根のために、植え込み材からの気化熱及び熱伝導の状況(空気の熱伝導は固体・液体よりも低いため)により、根が比較的冷えなかったと考えられます。
ミニカトレアヘゴ着けの例示は、置き場所・管理等の失敗例でありますが、このコーナーでこれまで7年に及ぶご紹介の経過もあり、掲示させてもらいました。
着生ランを栽培して日の浅い方にとっては水やり等での失敗が少なく管理が楽なことから、ヘゴ着けランをお勧めしたい一つの栽培方法だと思います。
またベテランの方々には、一つの栽培方法として着生ランの根の生育状態等を観察されて、別の視点からも楽しんでいただきたいと思います。
ヘゴ着けランの管理方法
ヘゴが常時湿った状態では根の量が少なくなり、ヘゴも傷みやすくます。
水やりした後、早く乾燥する状態のほうがランにもヘゴにもよいと言えます。
ヘゴが少しでも湿っている状態のときは、水やりを数日後に延ばします。
着生ランの特性として乾燥には強く、成長期は風通しの良い環境を好みます。
着生ランを鉢で栽培する場合は、年間を通して水やりの過多、また夏の高温期の蒸れ(風通し)等に注意しますが、へゴ着けの場合は水苔植えに比較して過湿や蒸れの心配はあまりありません。
天井の低い当園ビニールハウスの場合、目の高さで45℃に近いような高温の場所も、換気扇で空気を動かせば特に問題ありません。
ヘゴ着けの場合も冬季は乾燥気味に管理しますが、休眠期の冬季に乾燥で枯れることはほとんどありません。
肥料は全く与えなくても育ちますので、施肥の過多に注意します。
ヘゴ着けランの置き場所
ランに限らず置き場所の違いによる生育度は変わりますが、特にランは置き場所の環境が生育に影響します。
ランにも環境に対応する柔軟性・順応性がありますが、急激な変化は避けて徐々に慣らすようにします。
年間を通して栽培をする場所で鑑賞できれば理想的ですが、それができないときは目的によって移動したり、季節によって置き場所を移動することになります。
風通しのよい所が望ましい場所です。
冬季及び花等の鑑賞時は室内に置いても、それ以外の成長期は屋根のある外気と通じる所・フレーム内・軒下・屋外等に置くのが良いです。
鑑賞時に室内へ置く時は、夏冬ともエアコンの吹き出し口付近は避けてください。
雨の当たる場所では、長期間の降雨が続くとヘゴが水分を含み過ぎて、ランに対してもヘゴにもあまり良いことではありませんので、屋根のある場所へ置くのが適しています。(長雨時に一時取り込むようにすれば支障ありません。)
フウラン・セッコク等の日本に自生する着生ランは、梅雨時の長雨に当ってもさほど支障はありません。
テラス・軒下・ベランダ等に吊るす場合は、風でヘゴがあまり強く揺れない所へ吊るしてください。
風で揺れる場合は揺れないような対策をしてください。
外気の入る所では、台風等の接近時に取り外して管理してください。
鉢植えの草花等が置いてあれば、その上部へ吊るすのも場所を取らなくて良いと思います。(草花と同頻度の水やりは、ヘゴ着けランにとって過多となります。)
ヘゴの置き方は通風を考慮して、平板の上へ直接置くよりも、例えば2本のパイプを横に渡してその上に置くほうが、ランにもヘゴにも良いです。(網目材の上に置くと、根が網目を縫うようにヘゴに張り付く場合があり、取り外しは根を切断することになります。)
台所で使う水切り台のようなものの上へ置くのも良いです。
立柱タイプは風等で倒れる恐れがありますので、倒れないような処置をしてください。
重量のある素焼鉢・駄温鉢等の吸湿・通気性のある鉢の中にスチロール等の支持材等を入れて立てておくことも良いです。
遮光について
水苔植えと同様ですが、栽培には適度な遮光(春秋・夏・冬で変えられれば理想的です。)と通風(冬の密閉状態での日中の高温・夏の高温は換気扇があれば理想的です。)が得られる場所を選定します。
直射日光は葉焼けを起こす可能性があり、個々の品種により違いがありますが、40〜80%(明るい日陰程度)の遮光をしてください。
葉焼けは葉が白く変色した後に黒変して落葉しますが、葉が黄色味を増したり、下葉が多く落葉するのも採光が多いと言えます。
花の付き方に関しては、陽を多少多目に採ったほうが花付きが良くなりますが、株の樹勢に比較して適当な花数が理想的です。
冬季(11月中旬〜3月下旬頃)は30〜50%程度の遮光に調節してやるのが良いです。
吊り下げタイプの場合は、株の下方にある葉が若干、採光が弱めとなりますので、斜めに傾けて置くことができれば理想的です。
適度な遮光は判断が困難なものですが、しっかりと着生した後、葉焼け(黄変を含む)しない程度の若干多めな遮光とするほうが株が充実して花付き・根の伸長・新子の発生ともに良くなります。
ただし、富貴蘭の青物等は遮光してあっても多めの採光は避けて、特に弱めの採光(遮光率70〜85%)とします。
富貴蘭の高級品以外の覆輪品種、黄縞系の品種、花物は若干強め(個々の品種により違いますが、50〜70%)で良く、白縞、虎斑、青物はそれよりも弱めの採光とします。
遮光率は、年間の日照量及びランを置く位置の向き等、トータル的な日照時間も加味して決めた方が良いと思います。(例、遮光率75%は遮光率50%遮光ネットの二重張りとなります。遮光ネットを高い位置に張ると側面からの間接光が入り、葉裏等にも光が届くため、生育に良いと言えます。)
冬季は水やりを控えて乾き気味に管理してください。
前年まで加温栽培をされていたランの場合は、ほぼ同様の温度管理をするように配慮して、環境の大きな変化を避けるようにします。
冬季は寒風の当たらない場所へ置くようにして、洋ランとの交配種等は水の凍らない所へ置くようにします。
冬季、暖房した室内に置き続けることは避けてください。
当園栽培場はミニカトレア等も含めて、30年近くの間、冬季最低温度1〜2℃で管理しています。
1年以上の期間、冬季に加温栽培したランを無加温又は低温管理に移す場合は、生育障害に充分注意して数年間かけて徐々に慣らしてください。
春から晩秋にかけては、ヘゴが乾いた後、2,3日以上の間隔を空けて水やりし、夏季、水やり後すぐに乾燥しても3〜5日に1回の水やりで根等に水分を蓄えます。
春〜秋の期間の水やりはかん水してもすぐに乾くので、水の蒸散を減らすことと、フウランを含むバンダ系ランの特質からも、夕方から夜間にかけての水掛けが最も適しています。
着生ランのフウランを含むバンダ属等は自然環境下の乾燥に耐えられるように、余分な水分を蒸散させないために昼間は気孔を閉じています。
昼間に気孔を開く野菜を含む通常の植物とは逆になります。
夕方の気温が下がった時に気孔を開くため、気孔から水分を取り込みやすい夕方以降に水やりをするのが効果的です。
冬季は春〜秋とは逆に、水分もほとんど必要とはしませんので、夜間に入る前に乾くくらいの方が良いです。
雨天が続き、湿度が高くてヘゴの表面が湿っている時には、水やりを2,3日後に延ばしてください。
水やりに際しては、常にヘゴ表面が乾燥するまで待つのが良いです。
乾燥には強く、生育期に5〜7日間以上、水をやらないことがあっても支障ありません。
年間を通じて少し乾燥気味に管理したほうが、根がヘゴを巻くようになります。
極端に乾燥が強すぎると葉が小さくなり、花つきは少なくなります。
冬季は5〜7日に1回程度、できるだけ暖かい日の午前中に軽く水をやる程度でよく、ヘゴの隅々まで濡らす必要はありません。
フウランの場合、冬季に2週間程度以上、水をやらないと葉にしわを生じることがありますが、生育に支障はなく、3月下旬以降に通常の水やりを行えば元に戻ります。
春から秋の生育期間は、葉にしわを生ずるような水切れは避けたほうが良いです。
フウランヘゴ着けの乾燥に対する耐性について試みた結果がありますので、レポートコーナーのフウラン(ヘゴ着け・鉢植え)の耐乾燥性についてもご参照ください。
ヘゴ着けは水及び肥料の保持力が弱いため、年数を経るとランがやせ気味になることがあります。
日照を多く採り過ぎ、また強風にさらされるような場所では葉が小さくなり、花数も減少します。
このため2,000倍に薄めた液肥を春と秋に各季2,3回ずつ施すのが良く、ヘゴに着けた1年後からは緩効性肥料マグアンプK、10〜20粒程度を網袋等に入れて、ヘゴ上の吊り具等に掛けておくことも良いです。
濃い液肥や緩効性肥料でも溶出の速いものを与えると根に障害が出ることがあります。
無肥料でも育ちますので施肥過多は良くありません。
ヘゴ着けの場合、植え替えの必要はありません。
長年月経過してヘゴが腐朽した場合は、ヘゴを崩して植え替えます。
他の着生材に比較するとヘゴは柔らかいので、マイナスドライバー等でランの根を剥がすことができます。
ヘゴ材の維管束内に根が入り込むことは少ないですが、ヘゴ材の維管束の深くに潜り込んだ根も、マイナスドライバー等で掘り上げることにより外すことができます。
ヘゴに貼り着いた根を外したい場合は、2月前後の根が水分を失って収縮している時期が適しています。
プラスチックや金属等に貼り着いた場合は、根先先端が伸長を止めて白色になるのを待ち、先の薄いヘラ等を使えば剥がせます。
ヘゴに比較してランの株が大きくなりすぎた場合は、元のヘゴに着けたまま大きなヘゴに抱き合わせるように着けることもできます。
植え替え時期は3月が最適期ですが、2月〜6月ごろまでできます。
伸長中の根先先端(白色でない部分の約1cm)のみ、固い物に接触すると貼り着きますが、空中で伸びてしまった部分の根(白色部分)及び古い根は貼り着きません。
古い根も、春の伸長時に先端が伸び出すことがありますので、古根をヘゴ材に巻きつけておくと先端部から伸びた先が貼り着くことがあります。
根先が伸長に伴いヘゴからはみ出して空中へ出ることがありますが、そのままで支障ありません。
気になる場合は、ある程度伸びてから、根の先端以外の部分を弱く支持して、強く曲げずに伸長方向をヘゴ材の方へ誘引することは可能です。
伸長中の根先には触らないように作業します。
新根を強く曲げると折れた箇所で切断してしまいますが、古根は途中で折れたとしても養分を送ったり、水分を蓄える機能を失っていないので、そのまま付けておきます。
根を曲げて修整する場合は、その前にかん水して根を湿らせておくと曲げやすくなります。
古い根も生きている根(太く固い根)は水分を保持する能力がありますので、できるだけ切らないほうが良いです。
ランを着生させる各種材料
* ヘゴ
比較的安価に入手できますが、ワシントン条約で保護対象となったため流通量が減っています。
木性シダの茎から出る無数の気根の層(維管束)が水分・湿度と空気を保持するために植物が着生しやすい材料です。
常時湿らせずに、水やり後完全に乾かすという繰り返しであれば、耐久性は数十年という単位です。
* コルク
ブナ科の常緑高木コルクガシの樹皮で、その木から最初に剥がした皮は表面の亀裂や凹凸があるためラン栽培用として使われています。
多孔質で弾力性があり、水はほとんど通さないが通気性がわずかにあります。(コルク材・出典ウィキペディア)
耐久性はヘゴよりも高いと思われます。
肥料の保持力は低いと思われ、コルク材の凹凸部に着生した根は外すのが困難と思われます。
* 流木・木枠等の木材
形の良い流木の入手は困難ですが、根部等は形状も多様で面白い着生材料だと思います。
木枠はより乾燥を好むバンダ等によく使われています。
* 岩石
溶岩のような岩石は多孔質のものがあり、着生材料として使われています。
熱の伝導が良いために冬季は低温となりますが、多孔質のものは冬季の低温にも比較的安全と思います。
* 陶器
低温で焼いたものや、通気性を持たせたものも着生材料として使えます。
市販品はあまりないと思われますので、色々な形状のものを陶芸家に作製を依頼することも良いと思います。
* 生木
最も自然な状態に近い着生材で、着生材に若干の水分も保持されます。
樹肌はある程度粗くて剥がれ落ちず、溝や割れ目のあるほうが着生に適していると思います。
当地方で生木に着生させてある樹種は、柿とマキ(槇)がほとんどで、梅がまれにあります。
マキは表皮が薄く縦に剥がれやすいのですが、成長が遅くて太くなるのがゆっくりなことと、表皮が水分を含みやすいことがいいのかも知れません。
マキにはノキシノブの自然着生がよく見られます。
当宅でも柿の木に2株着けてあり、管理は全くせずに最も楽なのですが、手に取ったり花を観賞するために移動することはできないのが難点です。
着ける位置を目の高さほどにすると良いです。
生木についてはその後、2016年4月に柿以外の樹種に着生を試みました。(庭木着けとその後の経過、花咲Jの花だより2016年4月・同2017年7月・同2018年7月)
自然界で着生樹種が少ないのは、その樹種にラン菌が不在であったり、風で飛来した種子が発芽まで留まりにくいことが理由とも考えられます。
人工的に着けることは、着生樹の生えている環境に影響されますが、多種の樹木に着生させることができると思います。
* その他の材料
ランの根は堅いものであれば何にでも張り付きますので、独創的な材料を使うことも面白いと思います。
ランの根は表面が鏡面なものでも張り付きますが、水をはじくようなものより、多少なりとも乾くのに時間を要するものが適していると思います。
ランの生態に適した適度の保湿性がある材料を選ぶのが良いです。
ヘゴ着けランの作り方
上記文章と重複するところもありますが、ヘゴ着けランの作り方をご説明いたします。
こちらのページも合わせてご覧ください。「ヘゴラン作り」(ヘゴ着けフウラン・富貴蘭作製例)
着生させるランの選定
着生ランであれば何でも可能と思いますが、それ以外にも金陵辺蘭・ヘッカラン(寒鳳蘭)・オリヅルラン(ユリ科)・ノキシノブ等も着生します。
株は健全な作上がりしている株が良く、株全体として根を出す本数が多くなるため、樹勢のある株立ちの大きな株が良いです。
始めてヘゴ着けを作られる場合は、高級品種、希少種を避けて試されるのが良いと思います。
年間に根やバルブの出る本数が多いランが適し、春と秋にバルブを出す複茎種の洋ランは根の本数も多くて適しています。
洋ランと日本産のランとの交配種では、フウラン×アスコセントラム交配種等が根出し・根張り共に良く、フウランでもかつて巨大葉富貴蘭として出ていた長月殿との交配種、また、アマミフウランとの交配種等も根出し・根張りが良いです。
着生させるランの準備
資材の準備とともに、着生させるランを決めたら、できればその前(月・年単位のほうが良いです。)からかん水を控え目にしておけば万全です。
植物も環境順応性がありますが、水苔植えで充分な水分を得ているランが、ヘゴ着けという常に乾燥状態にある自生に近い環境に変って、過酷な自然環境に耐えてきた遺伝子を呼び覚ますためにも、ヘゴに着ける前から年間を通して乾燥気味に管理すると良いと思います。
冬季に加温しているランを使う場合は、環境変化には特に十分注意します。
着生させる時期は根の動き出す前の3〜4月が適しています。(フウランでは根の伸長が遅いため5〜6月頃まで可能です。)
最適期ではない10月以降にヘゴ着けした場合は、ヘゴに取り付けても来春以降の根出しにより活着となります。
晩秋〜翌春まで、風のあまり当らない水の凍らない明るい日陰に置き、3〜5日に1回(真冬は5〜10日に1回程度)の頻度で水やりするように管理します。
庭木に着ける場合は、根出しまでの環境も厳しくなりますので、4月〜6月に着けるのが安全です。
着生材料の調整
ランの大きさに見合った大きさの着生材を選びます。
着生材がランの株より小さくても着けることはできますが、活着まで水やりに気配りすることと、活着までの年数を要します。
着生材はランが生きていく足場になりますから、生育(活着)しやすい形に加工します。
置き場所や置き方、見栄えも考慮して、ヘゴ材の切断、面取り等を調整します。
適当な大きさ(株の2倍程度以上)に切断し、吊るすための穴を開け、切断面の角をヤスリで滑らかにします。
道具はノコギリ・ドリル又はキリ・木工ヤスリ等を使います。
ランの着け方
栽培場の環境条件や棚の構造、置き方等を考慮して、着生材料への着け方を決めます。
横置きにしたヘゴの平面上に着ける方法(中心吊り下げタイプ等・自然の状態では樹木の枝に着いた姿)
ヘゴ材を横置きし、その上面(吊り下がるランでは側面又は下面)にランを着ける形です。
ヘゴの中心を吊り下げる場合は、ランを着けた状態を想定してヘゴ全体の重心付近に吊下げ具を通す穴を開けます。
水苔植えと並べて置くことができ、水のやり方も変わりありません。
横置きに着けた場合はヘゴを2本のパイプ上に置くような方法がよいです。
下面が通気性のある空間になるように置きます。
ヘゴ材を縦にした垂直面に着ける方法(吊り下げタイプ等・自然の状態では樹木の幹に着いた姿)
水やり後の水切れがよいのですぐに乾きますが、乾きすぎて生育に支障が出るということはありません。
ヘゴの気根の繊維を縦に使います。
上部に吊り下げるための針金等を通す穴を開けておきます。
他には立柱タイプのようにヘゴ材の切断面上面に着けることもできます。
太いヘゴ材であれば縦にして立てて置き、その上面(切断面)や側面にランを着けることもできます。
作業は、鉢から抜いたランの水苔を全て除去し、ランをヘゴ上に据えて針金・紐等でヘゴに固定します。
紐は将来、そのまま腐朽させてもよいのですが、そうでないものは1〜3年後に取り除きます。
ランの株元部分はなるべくヘゴ材に接近するようにします。
湿度保持のため、ランの株底面に水苔を挟む方法もありますが、当園では自然の状態を考慮して水苔は使いません。
空中に伸びて白くなった根は二度とヘゴに貼り付きませんが、吸水能力は張り付いた根と同様にありますから、そのままにして切らないほうが良いです。
<根について>にありますように、先端が再度伸び出すことがあることから、古根をヘゴ材に巻きつけておくことも良いです。
ヘゴ着けして活着するまでの水やり
水苔植えランと同様の間隔で支障ありませんが、ヘゴに着けてから半年間くらいは若干多めにかけたほうが安全です。(水やり頻度が多すぎると根を伸ばさず、活着しにくくなります。)
通常のかん水間隔の間に、ヘゴまで濡らさなくてもランの葉と根にかける感覚で軽く振り水する水やりを、通常の間隔でかん水する中間に、たまに挟んで増やしても良いです。
ヘゴまで濡らすかん水をした後は、例え数十分で乾燥してもその後2〜3日間は水をやらないほうが良いです。
また、ランをある程度の間、乾燥状態においたほうが、根がヘゴに張り付きやすくなります。
水苔は完全に乾くと吸水に時間がかかりますが、ヘゴは乾いていても比較的容易に吸水します。
ヘゴに着ける適期を過ぎて9月以降にヘゴ着けした場合は、ランがヘゴに活着する翌春まで管理に注意します。
晩秋〜翌春まで、風のあまり当らない水の凍らない明るい日陰(遮光率70〜80%)に置き、3〜5日に1回(真冬は5〜10日に1回程度軽く)の頻度で水やりするように管理します。
庭木に着ける場合は、根出しまでの環境も厳しくなりますので、4月〜6月に着けるのが安全です。
庭木に着けた後も、1〜2年後までは遮光に配慮し、晴天が続く場合は上記間隔の頻度程度に水やりするように管理します。
また、一旦水苔植えに仮植えとして、来年2月から水の凍らない場所に置ける場合は、来年2月以降にヘゴ等に着けることができます。(ヘゴ着けの最適期は3〜5月です。)
石着けにする場合は、根が冷えますので3〜5月を待つのが良いです。
以上、当園なりのヘゴ着けラン作製方法を説明させてもらいましたが、それ以外の方法や工夫もたくさんあると思います。
ヘゴ着けランはラン栽培のいろいろな楽しみ方の一つとして、また、着生ランの自生における生態を観察するという面から、是非お試しになってください。
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