2014年1月分
ミディカトレアの黄花種です。
特に芸のある花ではありませんが、冬は暖色系の花色もいいと思います。
正月らしさのある植物は実物かなーと思うこのごろです。
カラタチバナの実が寒の冷気の中で映えます。
・ 2014.1.2 原始植物
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2014.1.2 原始植物
明けましておめでとうございます。
年がかわり、気持ちも一新して園芸を楽しく頑張りたいと思います。
寒さが一段と増す中、フウランは休眠に入り、ミニカトレアは秋の成長が終わり、新バルブに花を咲かせ出しました。
万両、カラタチバナは実も充実して、赤・白・黄・紫色等の実を一層鮮やかに輝かせています。
草木や動物にとっては1年の季節の移り変わりが、生きる上での重要なサイクルの指標になっていると思います。
植物は暖かくなれば伸び、花を咲かせ、寒くなれば眠るという、それはそれで理にかなった暮らしなのでしょう。
一般に植物は気温が10℃を下回るようになると成長を止めると言われていますが、最近はそれに合わせて水やりを減らしています。
加温をしていなくてもミニカトレア等は花芽を伸ばし、新芽もゆっくりと肥大してきますが、ほとんど加温しない当園の場合の水やりは10日間以上の間隔としています。
その点では大きな省力となりますが、正月からはランの植え替えが始まり、また忙しくなります。
アセビのつぼみです。
春に咲く花を冬に向かう前から、つぼみをこれほど大きくして備えています。
いつも感心するのですが、切羽詰まってからあたふたするJに比べて、このくらい万全に準備すれば何事もうまくいくのかなあと思ってしまいます。
2年ほど前に庭に植えたばかりのサザンカの苗木にいくつかの花が咲きました。
ツバキは好きな花ですが、サザンカも冬に咲く花としていいものです。
柿の木の根元に植えてあるクリスマスローズです。
丸くふくらんだ芽が力強さを感じさせてくれます。
花はちょっとさえない色の全くの並花です。
自宅横にある洗濯物干場になっているガラスフレーム内に吊り下げてあるヘゴ着けのレプトテス・ユニカラーです。
加温しないので外気温と変わらず、年数回はマイナス1〜2℃になりますが元気です。
もう少し暖かくなる春を待っていればよいと思うのに、今年も冬に向かってたくさんのつぼみを付けました。
咲くと冷凍状態になるのか花がいつまでも長持ちします。
今回は当ホームページ「販売品」→
「参考品」
に掲載してあるマツバランのその後の経過をご紹介いたします。
マツバランは江戸時代から続く古典園芸植物と言われる園芸文化の対象となった一つですが、その姿は園芸植物の中でも独特です。
「生きている古代植物」(保育社発行)によると、初めて陸上植物が現れた4億年前から発展して3億年以上前には最初の陸上植物に最も近い現生の植物マツバランの仲間が現れたとあります。
このマツバランの仲間には、マツバラン属とトメシプテリス属の2種があり、さらにマツバラン属に2種がある。また、マツバランはその姿を珍重し、江戸時代にはかなり一般的に栽培され、斑入りや茎の縮れたものなどの園芸品種がかなり存在したとあります。
江戸時代の安定した世情の中で、元は野生の植物を手近に置いて楽しみたいという園芸が、庶民の間にも起きてきた時代でした。
現代では都市部ばかりか山野へ行っても見かけることがなくなった園芸対象の植物が、当時は市井を一歩踏み出せばごく自然に見られたことと思われます。
特にマツバランは胞子が風に乗って飛び、半乾燥地に容易に発芽する性質から人家の周りにもたくさん見られたのかも知れません。
ダーウィンの言う「生きている化石」(太古の特徴をいまだに残している動植物)に含まれるマツバランは、姿は個性的であるも一見ごく普通の植物に見えます。
一般的なマツバランの姿です。
鉢の周囲に草が茂るとスギナと間違えて抜くことがたまにあります。
当園に昔からあるマツバランは、銘品・その名札を紛失してしまった札落ち、それにオモトやクンシランなどの鉢に自然に生えた実生品が入り混じっていますが、写真のものはほぼ原種に戻った実生品と思います。
しかし、茎はあっても葉(牧野植物図鑑によると茎にあるごく小さな鱗片状のものが葉≪葉の退化したものと言われています。≫とあります。)はなく、根に見えるものも茎(根茎)であり、上も下もないようなことですが、地下にある茎からは仮根が毛のように生えています。
茎は根となり、根は茎ですから、栽培していると鉢の底穴から緑色の茎(地上部と同様の茎)が伸びてきたりします。
自生の状態は樹上や岩の上に生える着生植物(着生ランと同じく寄生ではありません。)に含まれ、そういう生態や形態により花も咲かない原始的なマツバランが昔から人間の興味を引いたことと思います。
3億年も前から大きな進化(葉の退化については元がどういうものであったか知りません。)もせず地球上に存在するというのに、その突然変異である古典園芸品種は多種多様にあり、様々な表情で人間を楽しませてくれますが、その基本的な形態は進化することもなくおそらくこの先何千万年もこの姿を留めていくのでしょう。
当園に32年前からある麒麟角実生でありますが、これが本当に麒麟角の実生であるのか定かではありません。
幸いに当地で以前からマツバランを専門に栽培する花咲Jの園芸の先輩S氏の協力を得て、1年半前からその確認に取りかかりました。
最初は花咲Jが当園の麒麟角をS氏に見てもらった際に、これは麒麟角の実生だろうと言われたのが始まりです。
マツバランは元々屋外で栽培されることの多い植物ですが、かなりの陰地にも適応します。
当園では屋外に適当な栽培場所がないため、温室フレーム内のさらにランの棚下という日照の少ない場所に置いてあり、当然柄物の斑は冴えず、かなり徒長するものもあります。
当園の実生麒麟角が元祖麒麟角のただ徒長しただけのものか、それとも実生による変異種なのか確認したいという思いがありました。
2012年4月にS氏の所有する元祖麒麟角と当園の実生麒麟角を1鉢ずつ交換したものを、それぞれの棚で栽培し、どう変化するのか見ることにしました。
約1年半後の状況は、以下の写真のとおりです。
条件の違う栽培場に置いた結果は、非常に姿形が似てきたと言えます。
JとしてはS氏の指摘のとおりに、麒麟角の実生であってくれれば、いろいろな園芸植物を実生している者として嬉しいことです。
もし既存のものと少しでも違う新しい品種が出現すれば、園芸の楽しみも広がるように思います。
写真左のものがS氏の所有していた元祖麒麟角で、当園の棚で1年半経った状態です。
中央が当園から出てS氏の棚で育てられた実生麒麟角です。
右が昔から当園にある巨大化した実生麒麟角です。
元祖麒麟角と巨大化した実生麒麟角は、1年半前からガラスフレーム内の棚の上に置いてありました。
水苔は今まで敷いたことがなく、去年12月に敷いたものです。
左は元祖麒麟角で、手前に4本ある緑色の茎のうち左端と1本おいて2,3本目が当園の棚で出た茎です。
S氏の棚で作られたものより若干大きくなっています。
新木の高さは7〜9cmです。
右はS氏の棚で作られた実生麒麟角です。
高さは計らずに返却してしまいましたが、かなり低く抑えられています。
上の写真と同じものを角度を変えて撮った写真です。
小さくできた実生麒麟角をクローズアップして撮った写真です。
かなり良い感じの芸が出ています。
写真手前の2本が去年出た新子です。
当園の大株実生麒麟角です。
大きさによる迫力はあります。
左は実生麒麟角の別株ですが、マツバランの根茎の困った出方です。
鉢の水抜き穴から出て地上部と同様の茎になっています。
硬質で肉厚のプラスチック鉢のため、ずっと前からどうしようかと困ったままです。
右側は比較のために置いた元祖麒麟角です。
こちらもどうしようもないほどに鉢底から芽を伸ばした実生麒麟角です。
茎の最大長は31cmです。
角度を変えて写した実生麒麟角です。
地上部も地下部も茎ですから、地下に潜れば根茎となり、地上に現れれば茎となるだけのことでしょうか。
鉢底から見ると、発泡スチロール箱に乗せてあったため、鉢底下は根茎(と思われる。)で、明るい所へ出た部分から茎となっています。
何年も植え替えずにおくとよくこのようになります。
植物の生態や形態には驚くような多様性があり興味が尽きません。
1年半経過した状況は写真のとおりですが、交換した元祖麒麟角が少し徒長したことと、S氏の棚で手厚い培養をされた実生麒麟角が元祖麒麟角とほぼ同じ高さに抑えられたことから、同一品種の栽培条件の違いによるものという見方もできると思います。
それでは少し残念でもあるので、これからも栽培条件を考慮してさらに検証したいと思っております。