大型流木着け・大型ヘゴ着け風蘭の作り方 2023年1月22日
左右ともに当園では大型のヘゴ着け風蘭です。
ページトップへ | トップ | 販売品コーナー | 購入のご案内 | 送料のご案内 | お問い合わせ | レポートコーナー |
大型流木着け・大型ヘゴ着け風蘭の作り方 2023年1月22日(作製2022年11月12日)
流木又はヘゴに風蘭を着ける方法は今までと同様ですが、ここでは大型の流木やヘゴに風蘭を着けてみます。
流木は形状大きさとも様々で、手の平に乗るサイズから部屋の中に置けないほどのサイズまであります。
机のコーナーに置ける程度のものが手ごろなサイズと言えますが、ここではそれよりも大きなものを作ります。
ヘゴ材で最大のものは原木の丸太ですが、入手困難なため原木縦割り材のうち幅広で長いものを使ってみます。
流木は河川・ダム・海岸等に流れ着いたものを拾うことができますが、長く海水に浸かったものは長期間をかけた塩抜きが必要です。
塩抜きについては別ページ「室内卓上流木着け風蘭作り」を参照してください。
風蘭株は1本立ちでも白い根が1本以上あれば、管理を適正にすることにより基本的に枯れることはありませんし、1本立ちのヘゴ着けも活着して花を咲かせます。
大きな着生材を使う場合は、着生材に合わせて風蘭もそれなりに多く使います。
小振りなヘゴ着けにも味わいやそれなりの良さがありますが、風蘭・富貴蘭の特徴の一つは生長が遅く、増殖率も低いことです。
小さなヘゴ着けが増殖して大株になるには10年・20年の歳月が掛かります。
このため出来る限り短期間で見栄えのする流木・ヘゴ着け風蘭を作ってみることとします。
短期間とはいえ、新しく出た根が着生材に貼り付くのは4月〜8月ごろの根が伸びつつある期間のみで、作製時期にもよりますが活着まで1年半〜2年間は掛かります。
風蘭の花は根の伸長する期間内に咲き、視覚で捉えられる根の伸長期が過ぎると株の生長は止まったかのように見えますが、生長の遅い風蘭を長い目で見つめてもらいたいと思います。
見出しに掲載した当園では大型のヘゴ着け風蘭で、ヘゴ材3本を抱き合わせて立てた上面と側面に風蘭を着けてあります。
風蘭77本が着いており、株全体の最大幅約40cm、ヘゴ下端からの全高約43cmです。
ヘゴ着け後、9年以上経過しています。
こちらも見出しに掲載した大型のヘゴ着け風蘭です。
ヘゴ材2本を抱き合わせて立てた上面に風蘭84本が着いており、株全体の最大幅約42cm、ヘゴ下端からの全高約39cmです。
ヘゴ着け後、9年以上経過しています。
もし自然の中にこの程度の風蘭株があったとしたら、実生から50〜100年近く経っているかも知れません。
大型の流木に着けた風蘭です。
流木の大きさは最大幅約76cm、高さ約58cmで、風蘭107本が着けてあります。
作製は2021年の秋で、風蘭は活着したばかりのところです。
転倒防止のため合板に長尺ボルトを立てた台座に差し込んでありますが、風蘭の根は多数が合板に貼り付いています。
写真撮影時は根が合板に貼り付いた状態ですが、後段に記述するとおり、合板と接したまま年間管理することは良くありません。
例えば、展示や観賞する時にのみ敷板を転倒防止のために使用して、年間管理においては流木等の底面についても通風が必要です。
風蘭を固定するために縛っていたビニール被覆針金・ビニール紐は数日前に取り外してあり、活着した状態とはいえ風蘭の株の向きは様々です。
株の向きも丁寧に行えばある程度変えることができますが、風蘭が自律的に自然の状態に向きを変えるには数年間かかります。
新根が着生材を捉えず空中に向かって伸びた根がかなり見られます。
それらの根は気にしなければそのままで生長に全く支障ありませんが、根の伸長期に先端が再度伸びだすことが多いので、着生材に沿わせて縛りなおすと良いです。
多くの風蘭を着けると、中には根が1本も着生材を捉えない木も出てきますが、縛った紐等を取り外して落ちなければ何年でもその状態で生長を続けます。
風蘭を鉢の植え込み材から取り出して、水苔等を取り除き裸の状態でカゴ等に入れて管理しても遮光・通風・水やり・湿度等を適正にすれば枯れることはありませんから、着生材を捉えていなくても枯れるということはありません。
株が浮いているような場合は、株の向きを修整して再度紐等で縛っておくと良いです。
下面の合板は、転倒防止措置ですが、着生材の切り口が台座に接する置き方は良くないことが分かりました。
当園が委託販売している店舗に展示してあるナラの樹皮付き原木に着けた風蘭にも同様の
転倒防止措置をしてあります。
詳細は後述してありますが、ナラの原木の中心にドリルで穴を開けて、合板(展示品は厚い杉板)台座に差し込んで3年間ほど置いていたのですが、水分がナラ原木の切り口と杉板の接触面に溜まり、原木の中心に握りこぶしが入るほどの腐食孔が開いてしまいました。
大きな着生材は吊るせないため下面に水が溜まらない処置が必要で、丈夫な金網等の上へ置くのが良いです。
水やり、又は雨水に当てても1日程度で乾くようにすれば着生材を長持ちさせることができると思います。
上写真の合板の代わりに金具にボルトを立てたものとします。
ホームセンターで建築資材として売られている物の中心穴を拡げて長尺ボルトを立てました。
これをかごトレーに入れて、金網又は並べたパイプの上に置き通風を良くします。
自立はしても転倒するとダメージが大きいものにも使用します。
亜鉛メッキされているようですが、長年月では錆びてくると思いますので塗装を施すのが良いです。
本品も大型の流木に着けた風蘭・富貴蘭で、この流木着けも2021年秋に作製しました。
流木の大きさは最大幅約42cm、高さ約50cmで、風蘭38本・富貴蘭東海18本・青玉竜23本が着けてあります。
写真は2022年秋にビニール被覆針金とビニール紐を外したばかりの状況ですが、風蘭等はほぼ活着しています。
ビニール紐等を外してみると、青玉竜の1本着けの辺りが殺風景に感じられます。
流木は河口の海岸で拾ってきたものを1箇月以上水槽に浸けて塩抜きしました。
枝先の切れ具合から長年月漂流していたと思われます。
ささくれや尖った部分は既に無くなっており、立てて置くために底面を切断したのみで使いました。
塩分はほとんど抜けたと思われ、富貴蘭の根も流木に貼り付いています。
流木の表面に樹皮は残っておらず、波に洗われて角も取れ、毛羽立つような柔らかみもあって根が貼り付きやすい状態です。
木材の深部には浸み込んだ塩分が残っている可能性がありますが、そのせいで腐食を進める微生物も寄り付かなくなっているかも知れません。
反対側の状況です。
流木の表面積の割りにランが少ないと思います。
流木自体が面白く味わいのある形状の場合は、ランを着けすぎると形状が分からなくなってしまうので、どこにどの程度のランを着けるかは難しい問題です。
写真のように、細かな変化のない流木はランを多くして、流木よりランを目立たさせるのが良いと思います。
着生材の上の水平面にもよく貼り付きます。
側面の垂直面に比較すれば水が滞留しやすいし、どの向きにしても採光が良く当たります。
根が水の流れる所や滞留する場所へ伸びていくように見えますが、必ずしもそうではなく、水の流れてくる上方へさかのぼって伸びる根もあります。
富貴蘭の品種により着生しやすいものとそうではない品種があり、写真の東海は着生しやすい品種です。
獅子甲龍、鎧通し、轡虫、薄ピンク色花風蘭等も着生しやすい品種です。
空中へ向かって出ていたランの根を再度ビニール紐で縛った状況です。
さほど長い根は見当たらず、楽に出来ましたが、既に伸びた根は張り付きませんので、なるべく着生材に沿わせるように縛ります。
うまくすれば根先が再度伸長して貼り付く可能性があります。
根を縛るついでに株が少ないと思われる部分に株を付け足します。
株の木の向きや角度も修整すると良いです。
ランが年数を経て自律的に茎や葉の向き等を、着生材や置き場所に合わせて変えますが、より早く形を整えるために行います。
写真中央の青玉竜に、青玉竜4本を付け足しました。
反対側の状況です。
目立たない紐と違って、ビニール紐は見た目がよくありませんが、作業性が良いために使っています。
紐は根や葉を傷めない物なら何でも良く、耐久性も2年くらい持てば良いと思います。
木綿のタコ糸や麻紐は耐久性がなく、2年経たずに切れるものもあります。
紐を巻くときは茎や根を押さえますが、葉は付け根を除いて押さえないようにします。
巻いた後は葉のねじれ等を調整し、紐を掛けられなかった根先をピンセットで紐や他の根の下へ収めます。
このような作業がやりやすいのは、新根の伸長が止まるランの休眠期や休眠期に入ろうとするくらいの時期が、草体を動かしやすく良いということも言えます。
当園でのヘゴ着け・流木着け作業はほとんどが9月〜翌年3月ごろの手がすく期間となります。
無加温でも温室内であれば全く問題ありませんが、温室でない場合は置き場所の環境条件を工夫する必要があります。
置き場所はヘゴ着けも水苔植えと同様の場所で良く、冬季最低気温は0℃以上が安全です。
暖房はしないで休眠させておくようにします。
休眠状態を保つようにすれば活着まで少し暗めの採光で良いです。
大き目の風蘭は根量も多く、体力もありますので、着生材に着けやすいと思います。
また、花も付きやすく、活着前に咲かせても大きなダメージを受けることはないと思います。
開花は体力を使うことも確かですので、活着前は花芽が伸びだす前に欠き取ればより良いです。
形状の複雑な流木では、どの位置にランを着けるか迷いますが、凹凸の多いところへ着けると形状の個性的な部分がランに覆われてしまいます。
形状の複雑な部分を避けて、平らな部分に着ける方が良いと思います。
着ける量の多少や、品種の違うランを使う等、色々と工夫すると楽しめます。
ページトップへ |
新たに大型の流木やヘゴを使って風蘭を着けてみます。
流木A〜Dの4個及び長尺のヘゴ材1個を使用して、大型流木着け及び大型のヘゴ着け風蘭を作っていきます。
最大のものを流木Aとしますが、大きさは最大幅約38cm、高さ約49cmです。
海岸で拾ってきて塩抜きし、立てて置くために底面を切断した状態の流木です。
経年の古びた色合いや趣きを出すために枝の切断箇所やささくれをバーナーで焼いてみようと思います。
流木B
最大直径約17.5cm、高さ約50cmです。
こちらも同様の流木ですが、形状に変化はなく、丸太の先端部という感じです。
もう既に腐朽した状態に見えますが、河川や海岸にあるものは切断してみると意外に芯の部分に腐朽が見られない物が多いです。
上写真の先端部です。
刃物で切断したような形跡はなく、台風等の外力で折れたと思われます。
流木C・D
Cは最大直径約13cm、高さ約41cmです。
何の変哲もない丸太流木の端末です。
このような丸太であれば探すのも容易かと思います。
手前にある流木の先端部を切り落としたものを流木Dとします。
Dは最大直径約10.5cm、高さ約8.5cmの端材です。
カセットボンベ付きのバーナーで一部の表面を焼いた後の状況です。
流木は根元の部分と思われますが、木材が堅くて深く焼くことはできませんでした。
焼く場所は、危険を伴いますので屋外の安全な場所で行うようにします。
また、流木を必ずしも焼く必要はなく、今回は初めて試みに焼いてみました。
上写真の反対側の状況です。
強く焼けた範囲の一部は白く変色して灰化しています。
BCDを焼いた後の状況です。
Bの先端部はささくれをなくすためにやや深く焼きました。
Aの焼けた炭化部分を木工ヤスリで削り、黒色となった部分をワイヤーブラシでできる限り除去した状態です。
上写真の反対側ですが、古色感が出たかどうかは疑問です。
ワイヤーブラシで擦っても取れない炭化部分へランの根が貼り付くかどうかですが、以前炭の丸棒にランを着生させたものを見た記憶があるので大丈夫かと思います。
折れたような部分はかなり丸くなりました。
流木BCの先端部の状況です。
尖った部分を焼くことによって丸みが出たと思います。
炭化して黒くなった部分はヤスリ等で削ることもできますが、ランの根が貼り付けば良いと思いそのままにしました。
削り取るのも結構大変な作業です。
写真左側のCは木材が柔らかく、削れば削るほど取れてしまうので、ほどほどに良しとしました。
Bの先端部は木材が堅いところと柔らかな部分が混在し、削りにくくて時間がかかりました。
流木BCDを焼いて仕上げた状態です。
使用した工具は木工ヤスリ、ワイヤーブラシ、タガネです。
流木を焼いたカセットバーナーです。
火炎が横向きに長く出るため、取り扱いには注意が必要です。
ページトップへ |
流木Aに風蘭108本をビニール被覆針金で着けた状況です。
一抱えの大きさで重量もあり自立しますが、転倒防止の金具に差し込んであります。
複雑な形状の流木ではないため、大き目の風蘭を着けました。
着生材の外径が大きいと手で押さえながら風蘭を縛るのが困難なため、ビニール被覆針金の端末を木ねじに留めて縛っていきます。
よほど大きな株でない限り、針金は1本で十分留まります。
茎が浮いてしまったような部分は、ビニール紐で根とともに着生材に沿って縛ります。
凹凸の凹み部分に着ける場合は、針金が有効に掛けられませんので、凹みに木ねじを差し込んでから針金を掛けます。
流木の大きさからも大型の風蘭が似合いますが、大型の風蘭は根を出しやすく、根も太くて活着しやすいと言えます。
花が咲いても株が体力を消耗することも少なく、暑さ寒さへの抵抗力も高いと思います。
押さえる位置は株元で一番下の葉の茎への付け根付近を押さえます。
新根もこのあたりから出根しますが、針金が邪魔する恐れはさほどありません。
ある程度強く縛りますので、針金の反対側で着生材と接する茎から根が出ようとすると隙間がなくて出根できませんが、その場合は接する面を避けて出根するのではないかと思います。
流木Aに風蘭をビニール被覆針金で縛った後、ビニール紐で根を流木に沿わせて仕上がりました。
来年の根出しで貼り付いてくれるか心配になりますが、こうしておけば風蘭が独自に動いてくれます。
できるだけ機嫌よく活動してくれるように、置き場所の遮光加減や水やりに留意しますが、置き場所は一度決めれば途中で動かすことはほとんどないと思います。
長年育てていると、温室フレーム内でも良く出来る場所があるということに気付くことがあります。
育てる鉢の数が少ないと中々比較はできませんが、ある程度広い面積で多く育てている方のお棚で10年、20年と栽培していると偶然気付いたりすることがあると思います。
それはよく参考にするべきで、どの点が良いのか気付けば幸運と言えます。
流木Aの反対側の状況です。
流木Aは重量もあり、容易に動かすこともできません。
着生材の両面にランを着けた場合は、吊下げにしてたまに反転させると良いのですが、それもできません。
大きなものは壁際に置かないようにして、周囲から間接光が入る位置に置くようにします。
強い採光を好む植物は、影になる部分では生育が悪くなりますが、風蘭・富貴蘭は太陽側を向いていなくても間接光による明るさがあれば十分育ちます。
流木Aの上側の状況です。
上側に凹みがある着生材は、そういう部分へ植物を着けたくなりますが、水が一時的にも滞留する場所は着生ランに向いていません。
かつて浜松市のフラワーパーク園内の樹木に風蘭を着けさせてもらいました(「フラワーパーク樹木着けフウラン」参照)が、樹木の枝が分かれる部分はランの株が乗せやすくて着けたりもしました。
数年後の結果は、落ち葉等のゴミが溜まりやすく、虫の住処にもなり、適さないと思いました。
自生している風蘭を見たことがなく、間違っているかも知れませんが、そういう場所への着生は少ないと思います。
大きな流木には凹んだ部分や適当な位置に、ビニール被覆針金・ビニール紐を留めるビスが必要になります。
釘を打ち込んでも良いのですが、取り付け・取り外しを考慮すると木ねじが適します。
木ねじは必要最小限の太さ・長さのものを使います。
流木Bの炭化部分を削り取り仕上げた状態です。
流木BとCは吊下げるようにしました。
形状にもよりますが、底面を削って自立するようにしておくと作業がしやすいです。
ランを着けて水やりした場合、かなりの重量となりますので、余裕を持たせた吊り具が必要です。
吊り具のフックはビニール被覆針金の呼びbP4〜8を使い、番数が小さいほど太い針金となります。
着生材の重さ約400g以下はbP4で良いと思います。
流木Bの反対側の状況です。
炭化部分は出来る限り削り取った方が良いと思います。
ささくれや折損した部分は、焼いて深く炭化させ、その部分が自然に先細り丸くなったように加工できると良いです。
流木Bに風蘭59本を取り付けて、ビニール被覆針金で縛った状態です。
上から一段ずつ巻いて止め、4段に巻き終わった状態です。
片手でつかめる太さでは容易に巻けますが、それ以上の太さの場合は、始めに木ねじを立てて針金を巻き留め、ランを挟んで押さえながら一周を巻きます。
針金1本でランが留まりますので、後はビニール紐で根を押さえ、浮いたような茎を押さえて流木に沿わせるようにします。
流木Bの反対側です。
正面を決めたら裏側は少ない方が良いと思います。
年間の管理が多少面倒になりますが、両面とも正面とすることもできます。
風蘭は耐陰性もかなりありますので、一方向を向いたまま年間管理しても枯れたり徒長する恐れは少ないです。
その場合は裏側も開けた場所で、間接光が入る状態にします。
感覚的には裏側に明るい日影程度の採光があれば大きな問題はありません。
縛るビニール被覆針金は呼びbQ0番の太さが良いと思います。
両端をもって締め付け、交差させて180度ひねれば緩むことはありません。
締め付ける強さはほどほどですが、緩んで茎が動かなければ良く、茎や根に食い込んで凹むほどの強さでなければ良いと思います。
ランを縛る位置は、風蘭の場合、葉のある最も下葉より若干下方くらいを縛るのが縛りやすいです。
流木Bの根をビニール紐で巻いた状況です。
風蘭は上下4段に着けてありますが、上の段の株元を覆う程度に重ねて着けてあります。
隣り合う株同士の隙間は、あまり離すよりも接近していた方が良いと思います。
株数の関係で離す場合は、等間隔で離すよりも3〜5本程度の一塊として間を開けるのが良いと思います。
上写真の反対側の状況です。
ビニール紐の耐久性は2,3年で、そのころにはほぼ活着します。
ビニール紐は2,3年で取り外した方が見よいですが、ビニール被覆針金はさほど目立たないので、付けたままで支障ありません。
ビニール被覆に傷がなければ10年近く持ちます。
観賞上は細い針金もない方が良いので、その場合は活着していればニッパーで切断して取り外します。
こちらの面には割合に隙間なく風蘭が着けてありますが、丸太のため全周に風蘭を着けました。
風蘭59本を着けましたが、正面を決めて見える範囲のみに留めて着ければ、その半分以下で済むと思います。
流木Cを焼いた後、炭化した部分を削り取り、上部側面に貫通孔を開けて針金を通し、ナイロン釣り糸12号で吊下げるようにしました。
形状は単なる丸太で、流木を探せば容易に見つかるようなものです。
着生ランの根が貼り付きやすいような表面であれば良く、ランを多めに着ければ流木の形状はほとんど隠れてしまいます。
本品は表面が柔らかく水を含み易いように感じました。
ヘゴ材でも柔らかいものはランの根がヘゴ材内部に深く入り込み、ランが着生しやすいと思います。
ただし、堅い材に比較すると腐朽しやすいと言えます。
水持ちが良いことから水やりは減らすことが可能で、そうすることで腐朽を遅らせることができます。
流木Cに風蘭97本を4段巻きに着けた状態です。
流木はごく平凡な丸太ですが、ランを多く着ければ元の形は隠されてしまいます。
活着までに2,3本は枯れる可能性もありますが、ほぼ大丈夫だと思います。
水苔栽培の風蘭を鉢から取り出して水苔を除去し、裸の状態で水苔栽培の風蘭と同じ環境・水やりを長い期間継続しても枯れるということはありませんでした。
ヘゴ着けの風蘭を見てもほぼ同じ状況で、活着していても根がヘゴの内部に侵入しているものはほとんどなく、根の外周の一部の面がヘゴに貼り付いているのみです。
人間が根を水苔の中に入れたくなりますが、風蘭にとっては裸の状態で生育していくのが自然であるとも言えます。
流木着けを作ったばかりの時は、枯れないかとの不安もあり色々と考えてしまいますが、このまま普段の水やり管理をしていれば活着します。
考えすぎて普段の管理と違い過ぎることをやらない方が良いと思います。
流木Cの反対側です。
丸太へ全面に着ければ裏も表もありませんが、針金ではなく糸や紐で吊るすようにすれば、流木着けが回転して採光の偏りも少なくなります。
流木は樹種や流木となってからの年月等により表面が様々ですが、ランの根が貼り付きやすいものとそれほどではないものがあると思います。
表面が堅く、ツルツルしたものより、適度に柔らかく水を掛けた時に僅かでも水を含み易いものが適していると思います。
一段ずつビニール被覆針金で巻いた後、最下段の風蘭の根をビニール紐で巻いて完了としました。
ビニール被覆針金は各段一重巻きですが、最上段を巻いた下方へ二段目を少し重ねるように巻いたため、一〜三段目の根はビニール紐で巻くのを省略しました。
この写真ほど風蘭を密集させて巻いたことはありませんが、密集すれば水やり後に水分の滞留も多くなり、生育に良いと期待しています。
乾燥を好むと思われる風蘭の育て方と矛盾するようなことですが、水を好まないということではなく、乾湿のメリハリが大切だと思います。
十分に乾燥させた後、たっぷり濡らす。
自然界にあっては1週間に1回雨が降ってもごくわずかな雨量の時もあります。
そうしてみると水やりの2回目はたっぷりでなく、1回おきくらいで掛ける量を変えるのが良いのかも知れません。
当園では安全を考慮して水やりは3〜5日に1回と表示しておりますが、1週間に1回でも支障はありません。
ビニール紐で縛った流木Cの下部付近の状況です。
丸太の直径が太く、片手で針金と風蘭の茎を押さえきれないため、巻き始めの部分にビスを差し込んであります。
活着まで1〜2年間はこの状態で管理します。
写真は1本着けのヘゴ着け風蘭で、着けてから既に少なくても2年以上は経過して活着しています。
なぜ1本のみ着けたのか記憶になく、2022年に花が咲いていたので気付きました。
こぼれ落ちた風蘭を着けたのは確かでしょうが、向きも葉姿も整っていません。
大型流木着けとは対極ですが、花を咲かせた姿はかわいいものでした。
ケチと言うよりも節約志向と言ってもらいたいのですが、切り落とした流木先端の端材を大切に使って風蘭を着けてみました。
着けてから2年経っており、活着していたので縛っていたビニール被覆針金を外したところです。
新根3本当たり1、2本程度が着生材を捉えています。
上写真の反対側です。
こぼれ落ちた富貴蘭東海の小株も着けてあります。
このような小品は手軽に作ることができます。
着生材が小さいために早く乾きますので、水やりはやや多めで良く、遮光も若干暗めが良いと思います。
着生材の端材が出たら、それを活用してみるのも良いと思います。
流木の先端部を切り落とした端材の流木Dです。
小さなランには草体相応の小さな着生材も良いと思います。
あまり小さな着生材は、うまく着けにくく活着後の管理も少し難しくなりますが、捨てるにはもったいなく思い使ってみます。
中心に穴を開けナイロン釣り糸を通して吊下げるようにしました。
極小品の流木Dに富貴蘭「青玉竜」9本をビニール被覆針金で縛った状況です。
青玉竜は他の富貴蘭と比較しても割り合い根量が多いため活着させやすい品種です。
着生材が小さいと乾燥しやすいために水やりは若干多くしたいと思いますが、当園では個別に水やりするのが難しく、他のランと同じ頻度での水やりとしています。
富貴蘭の無地青物は、他の富貴蘭に比較して遮光率を多く(より暗く)します。
着生材が円錐形のため、針金が上に抜けないように縛ってあります。
底面に針金を留める木ねじがあります。
ビニール被覆針金で留めた後、はねた茎や空中に出ている根をビニール紐で縛った状況です。
紐で縛ると根が着生材と接する他に、ビニール紐の積層部分も若干の水を含み、活着に良い影響を及ぼす可能性があるかも知れません。
ただし、巻き過ぎは根が着生材に貼り付く部分の面積を減らしますので、必要最小限に留めます。
稀に根がビニール紐の薄い層の間に進入し、直径の半周程度を紐の中で進むことがあります。
ヘゴ長尺Eとして、ヘゴ材の長尺物にも風蘭を着けてみました。
ヘゴ材の大きさは、幅約8.5〜9cm、長さ約40cmです。
出来る限り早い完成を目指して、長尺ヘゴに風蘭38本をかなり密集させて着けました。
4,5段に着け、株同士の両側の隙間はかなり狭く着けてあります。
1株の大株や株立ちを着けるのも手っ取り早い方法ですが、その場合は垂直の壁面に着けるより水平面上に着ける方が着けやすいと思います。
今回は1〜2,3本立ちのばらけた株を着けましたが、垂直面に並べて着けるにはその方が着けやすいと思います。
垂直面に着けた場合、その後の1,2年間は吊下げずに寝かせて置く方が水持ちが良く、生育も良い場合があります。
また、吊下げの下部に着けた株は、採光が若干弱いために花付きが少なかったり徒長気味となることもあります。
その対策として寝かせて置くこともあります。
ヘゴ材を横から見た状況です。
上の段から着けていき、すぐ下の段は上にある風蘭の根に乗せるように重ねて着けていきます。
このため上の段の風蘭はほぼ固定されます。
針金は角部で止める方が締めやすいのですが、角部では被覆針金のビニール被覆が傷つきやすいです。
呼び径20番(直径0.9mm)の針金が露出すると錆が生じて2,3年で切れることがあります。
稀に4,5年経過しても着生材を捉えない株が出ることもありますので、ビニール被覆針金はなるべく傷つけないように注意します。
ビニール紐を巻き付けてヘゴ着け作りが完成しました。
ここまでの作業は難しいことはありません。
後は置き場所の設定ができれば、時間を経てランが自ら動いてくれます。
着けたばかりは少し不自然に見える姿勢も、年月とともにランが葉や茎の向きさえも変えて自然な姿となってくれます。
そうは言っても育てる人が向きを修整する手助けをすれば、更に良い形になると思います。
ヘゴ長尺Eのビニール紐巻きを終え、側面から見た状況です。
少し浮いた茎と根をビニール紐で押さえました。
活着までの水やりは若干多くした方が良いと思いますが、多過ぎるとランの根出しや根の伸長を少なくします。
自然界ではほぼ裸の状態で生長していますので、着生材や草体が乾燥した状態でいる時間の方が圧倒的に長いと思います。
1週間や10日間水を掛けなくても枯れるということはありませんが、1度たっぷりと水やりしたら着生材が完全に乾くまで、更に乾いた後最低2,3日は水をやらないようにします。
屋外管理では雨天後の日数管理に注意が必要です。
また、5〜7月以外の長雨にも注意します。
ページトップへ |
こちらは草花等の委託販売店ファーマーズマーケット2店舗の庇下と屋内に置かせていただいているディスプレー用の枯木着け風蘭です。
枯木の樹種はナラ原木で、山間にある道の駅の関係者を通して山仕事をしている方に切り出していただいたものです。
風蘭を着けたのは2018年8月12日で、その1,2年前に切り出してもらい、上面切り口のみニスを塗ってあります。
注意書きとして表示もしてありますが、樹皮の付いた枯木は経年により樹皮が剥がれるため、ランを着けるのはお勧め出来ません。
作製当初はそう思ったのですが既に4年間以上経ち、今のところ剥がれる兆しは見えません。
展示を始めてから3年間くらい経ちます。
下に設置してある杉板は、もう一つのディスプレー品のものと交換してあります。
本写真から3枚目までは、庇下に売り場のある店舗に置いたディスプレー品です。
原木の高さ約51cm、風蘭を含む最大幅約42cmです。
上写真の側面の状況です。
ナラ原木は椎茸栽培に用いられますが、樹皮の形質がいかにも着生ランが好みそうに思えます。
実際に風蘭との相性は良いようで、良く貼り付いて花も毎年多く咲かせます。
置き場所は庇下の売り場で通風が良く通り、天井がある程度高いため蛍光灯照明とともに間接光も入ります。
水やりは年間を通して1週間に1回のため、庇下の方は常によく乾燥しています。
当園ガラスフレーム内の水やりは、冬季二重張りをして乾燥しにくくなるため10〜15日に1回ですが、ディスプレー品は冬季も1週間に1回として多過ぎる状態です。
こちら側を正面として展示しています。
方向は展示開始以来替えませんが、照明等の間接光により裏面側の風蘭も問題なく生育しています。
切断面の上の黒いプラスチック容器は、水苔植えランを載せる入れ物です。
本品は切り出したばかりの生木に風蘭を着けています。
なお、椎茸菌を打ち込んで温室フレーム内の砂地地面に立てて置いたナラ原木は、6,7年過ぎたものの多くが原木の芯まで腐朽してしまいました。
こちらは屋内の売り場に置いてあるディスプレー品です。
屋内に置いた方は、春秋は2方向の壁面がある程度開放され、夏冬は締め切られます。
採光は庇下とほぼ同じ条件です。
こちらの下面に敷いた杉板は腐朽して穴が開いたため、庇下のディスプレー品に使用しています。
庇下のディスプレー品に敷いてあった杉板は、大きな損傷がないのですが、敷板と接して置くことが良くないと分かったため交換し、こちらは敷板なしとしました。
交換した理由は、ナラ原木と接する面に穴が開いていれば、板とナラが接しないためです。
写真左下にある葉の大きなラン3本は風蘭×アスコセントラム交配種のピンク色花です。
店舗内の売り場で花が咲くか分からなかったのですが、毎年3本くらいの花茎に多くの花を咲かせます。
原木の高さ約56cm、風蘭を含む最大幅約44cmで、作製日は前出と同じです。
上写真の反対側の状況です。
こちらのディスプレー品は敷板とナラ原木芯部が腐朽したため、2022年の途中から敷板を外しています。
陳列棚は鉄網製のため、水が滞留することはありません。
ディスプレー品で失敗したことは、枯木着けを展示するうえで写真の杉板(厚さ3cm)に太い針金を立てて差し込み、転倒防止をしたことでした。
ナラの底面(ニス塗りなし)が杉板と接する隙間に水やり後の水が浸入して3年近くの間に腐朽し、杉板には穴が開き、ナラ原木の芯部にも穴が開いてしまいました。
展示していた後半の期間は、杉板にカビのような付着物が取っても取っても出てきて、ある時、水やりのため床面に降ろそうとしてぐらりと倒れかけて気付きました。
写真は穴が開いた後に、バーナーで表面を焼いてあります。
木材を腐朽させる菌の侵食力の強さと速度には驚かされます。
ちなみに原木に椎茸菌は打ち込んでありませんが、椎茸は出てきませんでした。
ナラ原木の方は深さ10cm以上が腐朽してスカスカの状態でした。
強度がないため、鉄パイプを打ち込んで応急処置としました。
ナラ原木は重量もありますが、底面付近は周囲の樹皮のみで持ちこたえている状況です。
流木やヘゴ、枯木を着生材に使った場合は、水やりした後にしっかりと乾燥させることが、着生材を長持ちさせることになります。
その方法は着生ランにとっても生育に良い結果をもたらします。
独特の根の伸長ぶりを見せるヘゴ着け風蘭です。
当園では、時には伸びすぎた根を束ねることもありますが、本品は吊下げていて自然とこうなったものです。
あたかも水の流下する道に従うような根の伸び方です。
ヘゴ着けを作り始めた初期に作ったもので、作製から15年以上経過しています。
風蘭38本が着いています。
ホームページで紹介したことがある当園ではもっとも古い作製のヘゴ着け風蘭です。
おそらく20年近く経っていると思います。
現在、子芽を除いて風蘭31本が着いています。
たまたま上手く育ったと言えますが、ヘゴ材の小ささに感心しています。
下段にも記述しましたが、ランの量に比較して小さ過ぎる着生材は少し育てるのが難しいと思います。
着生材にわずかに留まる水分を糧とすることもなく、ほとんど草体が裸で空中にあるような状態です。
フレーム内の置き場所もどこに置いていたのか定かではありません。
端材に近いヘゴの大きさから、それに不相応な大きな株を着けたことはなく、20年近い間にある程度増殖したことは確かです。
上方から撮影した写真ですが、擦り切れるほどの薄さのヘゴ材ですが、子芽は良く出しています。
長年月経過すると親株は下葉を落とした部分が長くなりやすいのですが、それが目立たないのは子出しの良い性質の株だったのかも知れません。
裏面からヘゴの大きさが分かります。
根量も十分なボリュームがあります。
本品は数多く作った中のごく稀な例であり、これと同じものが作れる自信はありません。
こういうものも出来る可能性があるという例です。
本品も当園では特に大きなヘゴ着け風蘭です。
風蘭69本が着いており、根は最長110cmあって根量も多いです。
枯れて針金状になった根は整理して切り取ることもありますが、このように密集すると根と根が互いに貼り付いてしまい容易にほぐすことが出来ません。
作製から10年以上経過しています。
当園としては大型の流木や長尺ヘゴ材を使用して風蘭を着ける作り方をご紹介いたしました。
あまりに大きなものは置くスペースが問題になりますが、置ける範囲の中で色々なものを作って楽しんでいただきたいと思います。
作製して完了というものでもなく、その後の毎日の管理が大切になります。
特に秋から翌春の期間は目立つ生育の変化もなく、毎日同じ姿を見ているだけということもありますが、生きて育っていることは確かです。
その変化のない期間に少しずつじっと翌春の活動期のパワーを充電していると思います。
不活動期は水やりも減り、病虫害もほとんど発生しませんので、手間はさほどではありません。
管理者も着生ランの活動期に備えて休める時間と思えます。
寒冷地も含めて冬越し対策もしなければなりませんが、ランの休眠期にはじっくりと時間をかけてヘゴ着け流木着けを作る好機であり、また、適した時期とも言えます。
活動期直前はすぐに根出しが始まり、最適期と言えますが、秋から翌春の期間は根の柔軟性が増し、新根が伸長している時よりも作業しやすいと言えます。
当園では特に近年、ほとんどがこの時期の作業となっています。
冬越しにおける若干の注意事項は、寒波が来る前にはヘゴ材に水が浸み込んだ状態でおかないように、水やりは茎・葉・根・ヘゴの表面を薄く濡らすくらいで良いです。
氷点下にならないようであれば、若しくは乾ききっていれば、水やり2回のうち1回くらいは軽くサーっとヘゴ着けの表裏全体に水かけします。
氷点下にならなければ、ヘゴ材に水が浸み込んでも全く支障ありません。
乾燥していればマイナス5℃くらいまで株は十分耐えますが、ヘゴや植え込み材が凍る状態は避けるようにします。
小さな空間容積では温度が急上昇することがあるため、温度変化はなるべく減らし、日中に25℃程度以上にならない場所に置くのが良いです。
氷点下での暖房以外はしない方が良いですが、温室で育てられたランはその限りではありません。
遮光は重要で、直射日光は避け、間接光で良いのですが明るい日影程度の採光とします。
ヘゴ着け・流木着けを作った年は、それよりも若干暗めの場所でも良いです。
作った年の水やり(春〜秋)は、5日間に1回くらいの目安でかん水し、1回おきくらいにたっぷりと水やりします。
肥料としてはごく薄い液肥が良く、濃い肥料を与えると肥料負けが出て、枯れなくても回復には数年かかります。
弱々しい株に与えたくなりますが、健康でない株に肥料は与えないようにします。
与えなくても十分に育つため、安全のために最初は与えない方が良いです。
与える場合は、2,000倍以上に薄めた液肥であれば問題ありません。
植物の中でも風蘭・富貴蘭はスローモーな生育の植物です。
早い結果を求めずにその生育を楽しんでいただければ幸いです。
ページトップへ | トップ | 販売品コーナー | 購入のご案内 | 送料のご案内 | お問い合わせ | レポートコーナー |